他人を引きずり下ろしたときに生まれる快感「シャーデンフロイデ」。ネットで成功者の粗探しをして糾弾したりして悦びに浸る行為の根幹を脳科学で語る。非生産的な「妬み」現代社会が抱える病理の象徴の正体を解き明かす。
シャーデンフロイデとは何か?
「シャーデンフロイデ」は、誰かが失敗した時に、思わず湧き起こってしまう喜びの感情のことです。
その相手に対して、こんな感情をもともと持っていたら、この喜びはさらに強くなります。自分にだって、あれくらいのことはできる。それなのになぜ、あの人だけが不当に高く評価されて、いい思いをしているのか。
なにか不正な手段を使っているんじゃないか。色仕掛け? 「イケメンに限る」というやつ? 〝お友だち〟だから?
ゴマをすって、 媚 を売ってまで、利益を得たいのか。汚いやつ。ずるい。許せない──。
そんなあの人に、どうやら困ったことが起きたらしい。
それが原因で家族に去られ、仕事でも 躓き、損失を出して周りに迷惑を掛け、いまは失意のどん底にいるようだ。
いい気味だ。調子に乗るからだ。どうせならもっと痛い目に遭えば面白いのに。死ねばいいのに──。
いかがでしょうか。
この一連の流れの後半部分にあたる感情がシャーデンフロイデです。
前半は、説明するまでもないと思いますが、 妬みと呼ばれる感情です。これらは、ある種の週刊誌の売り上げを下支えする感情、といってもいいかもしれません。
あるある! と素直に捉えてくださる読者もきっといると思います。
ただ、こうあけすけに書かれてしまうと、何ということをこの著者は書いているのだ、こんな話を理解できる自分であってはならない……と、もしかしたら読みづらさを感じてしまう方もいるかもしれません。理解しようとする認知プロセスに、強い倫理観が無意識にブレーキをかけてしまうからです。
でもこれは、本当は誰でも持っている心の動きなのです。
嫌いな相手が失敗すると「ざまあみろ」という感情が芽生えるのは誰にでも少なからずあるだろう。これがSNSの投稿など相手に見える形で残ってしまう世の中になってしまったのが現代の病巣。糾弾のツイートをしたりしてそれが相手に届いたり、煽ってくる人間が増えるのに快感を覚えたり、人間のタチの悪い部分を倍増させるツールが揃いすぎている。少なくとも昔はもっと狭い世界での出来事だったのだが。
承認欲求ジャンキー
仕事が忙しいにもかかわらず、自分のフェイスブックへの反応が気になってしかたがないという 30 代の男性がいます。
彼は、外出中やランチタイムにたびたび自分の記事にチェックを入れ、「いいね!」が少なければがっかりし、なにか批判的なコメントでも書き込まれていようものなら、落ち込んで仕事も手につかなくなるといいます。
だったら、記事をアップするのをやめてしまえばいいのに、それもできないのです。まるで承認が欲しくてたまらない重症の中毒患者のように見えます。
また、ひと頃、「バカッター」などと呼ばれて、一般的な良識の範囲から逸脱した写真や動画を投稿することで、多くの人の注目を集めようとする人が続出しました。
コンビニでアイスクリームを販売するためのケースに横になった写真を投稿したり、売り物のおでんをつんつんとつつき、それを「けしからん」と攻撃するであろう人の姿をおそらく想像して、楽しげにその行為を続ける姿を動画にとって投稿したりした人たちのことです。この人たちこそ、「承認欲求ジャンキー」の典型と言えるかもしれません。
こういった人々が、かなりのコストをかけてまで、認めてもらいたがるのは、なぜなのでしょうか。
ラットを使った、薬物依存に関する実験があります。ラットパーク実験、と呼ばれるものです。もしかしたら、この実験結果が、承認欲求ジャンキーたちの振る舞いを読み解くヒントになるかもしれません。
ラットを狭いかごに入れたままにして、モルヒネ入りの水を用意しておくと、その水をどんどん飲むようになります。
ところが、ラットパークと名付けられた広々として遊び場もたくさんある飼育環境でオス・メス混ぜた状態にしておくと、モルヒネ入りの水があっても飲まないのです。
狭い世界で生きている人ほど承認欲求が強くなりがちということだろうか。外に自分の承認欲求を求めがちになるというのはわかる気がする。SNSがその確固たる例。日常生活が充実して忙しい人はSNSなどにいちいち反応していられない。適度な距離をとって生活しているのが普通の人。SNSにどっぷり浸かっている人を〇〇廃とかいうのはそのせいもある。
人を妬む心を現実世界に投下して他人を貶める行為を科学的に分析。人間の嫌な部分を知ることで自分がそうならないようブレーキをかけるきっかけとなればよい。
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