毛色の違う世界の二大コンサルを両方経験した著者がその問題解決方法の基本技とその限界を語る。新時代の問題解決の教科書として定石の新たな活用法を豊富な事例とともにお届け。
ファクトベースのマッキンゼーと心理学重視のボスコン
マッキンゼーの特徴は、ファクトベース。決められた形どおりに ファクト* を集め、新人でも、正しい分析とそこから導き出される答えを得ることができるよう、優れたプログラムを持っていて、それによって、原則として、一プロジェクト三カ月で答えを出す。
シニアマネージャーと複数の若手コンサルタントによるチームでおこない、人による質のばらつきも少ない。「ファクトベース、一プロジェクト三カ月、調査し、分析し、戦略を立てて終了」 が、マッキンゼーの定番メニューである。
問題は、本来、 総合芸術である問題解決がただの分析にとどまりがち だということだ。新人だけでなくシニアマネージャークラスも、経営や実学の知識が乏しいために、分析に頼りがちになる。これでは近い将来、AIに負ける。
大前研一さんがマッキンゼーの日本代表として日本に本格的にコンサルを広めた頃は、そうではなかった。ただの分析屋ではなかった。それが、どんどん専門化され、いまのように、「問題解決」イコール「ロジカル・シンキング」のようになってしまった途端に、もっとも重要なところが抜け落ちてしまった。
私には、 本来、ただの前提でしかなかったロジカル・シンキングがすべてのようになってしまっている ように見える。
堀紘一さんが日本代表を務めていたボスコンは、マッキンゼーとはかなり「芸風」が異なる。 一プロジェクトに三年はかけることもざら である。担当コンサルタントは、クライアント企業の社内に入り込み、問題解決への道のりを手取り足取り、 社員とともに試行錯誤しながら伴走する。
そのなかで、クライアントの企業の人たちが、自分たちで気づいていくのを、辛抱強く待つ、というやり方をとるのだ。わずか三カ月で、あとはあなた方が実行してくださいね、と突き放すマッキンゼーとは大違いだ。
問題解決のアプローチも二大コンサルではこんなに違うという良い例。取り入れる場合は人を選ぶ。突き放しても食らい付いてくる新人ならいいが、そうでない場合、自分たちで気付くまで辛抱強く待たねばならない。
それは本当に、トレードオフの関係か?
意思決定とは、限られたリソースの中で何かを選ぶことだ。 それはとりもなおさず、 それ以外の多くを捨てる選択をすることでもある。トヨタの豊田章男社長は、「決断」とは「断ずる」(やめる)ことを「決める」ことだと語る。けだし、名言である。
しかし、その選択をせずに、あれもこれもと、踏ん切りがつかない経営者が非常に多い。いわゆる「ウィッシュフル・シンキング(身勝手な希望的観測)」である。そういうなかで、何を捨てますか? とあえて問うのが、コンサルの仕事だ。
実際、多くの事柄があちらを立てればこちらが立たず、のトレードオフの関係にある。そんななかで何を捨て何を選ぶかの選択は、非常に難しい。ひとつ間違えると命取りとなる。どうすればいいか? そこでのひとつのヒントは、 時間軸の視点を加える ことだ。
Aをとるか、Bをとるか、 それぞれの選択について、短期的なマイナスとプラスと、長期的なマイナスとプラスを列挙してみる わけだ。そして、AとBが本当にトレードオフの関係にあるのかどうかを見直してみる。
そして、仮に先にAを行って、次にBを行うことはできないのか? その逆ならどうか? を突き詰めてみる。すると、単なる順番だけの問題だったことに気づくことも少なくない。
トレードオフの関係において取捨選択が重要になってくる。その問題におけるミニマムはなにかを考え捨てられるものを考える。突き詰めると骨格のみ残るのがわかるだろう。
ファクトはこうしてつくられる
一番ずるいファクトのつくり方は、インタビューだ。 インタビューには二つの方法がある。
ひとつは、 専門家インタビュー。専門家に答えを聞いてしまうわけだ。ひとりでは、ファクトではなくオピニオンなのだが、たとえば、専門家五人に聞いて、なんらかの散らばりや傾向が見えてくると、それはひとつのファクトとなる。
もうひとつのインタビューは、 グループインタビュー(グルイン)だ。数人にグルインを行って傾向値を見る。それだけでは、n数が少ないため、統計に落とせるだけのn数を得るために、選択式のアンケートを実施して結果を集計し、数値化する。そうすることで、立派なファクトがつくられる。マーケティングの人たちにとっては一般的な手法だ。
ただ、このグルインやアンケートの結果と、実際の行動は異なることもよくある。たとえば、環境に配慮した商品には多少プレミアムを払う、などという選択肢があると、つい格好をつけて丸をつける人がいる。実際には、値段を比較して、少しでも安いものを買うくせに。よく見かける光景だ。 グルインやアンケートは、実際の行動ではなく、「そう思っている」ということを示したものにすぎない ことを、よく理解しておくべきである。
インタビューはファクト作りの一番ずるい方法である。それ故に場合によっては機能しないことも。なんとなく理想に寄せて語ってしまったり、自分なりの正解に寄せてしまいがちで実際とは乖離する場合があるからだ。
問題解決に必要な方法論を二大コンサルそれぞれのアプローチ方法を披露。そこには正解と思しきもの、方向性を示すのにはここを抑えなくてはというポイントが並ぶ。壁にぶち当たったときに役立つ問題解決の教科書。
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