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できるリーダーは、「これ」しかやらない|伊庭 正康|メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ

部下のモチベーションを管理して能力をフル活用。そんなリーダーの正しい頑張り方と任せ方を具体的にアドバイス、忙しい管理職のための一冊。

〝厳しさ〟が〝パワハラ〟になる時代

「不用意に厳しく接する」のが、とても危険な時代 になりました。

本人のためだと思ってやったことが、パワハラと見なされてもおかしくないからです。

実際、この 10 年でパワハラに関する労働局への相談は3倍に急増しており、中身を見ると「無理な仕事を押しつけられた」というものも紹介されています。

その上司は青天の霹靂 だったかもしれません。

日本能率協会が発表した、2018年入社の新入社員に対する意識調査の「理想の上司ランキング」には、若者の傾向を常にウォッチしている私ですら、驚きました。

「叱ってくれる上司」のランキングが、4位→5位→ 10 位と、3回連続で〝急降下〟しているのです。

これは良し悪しの問題ではなく、環境の問題でしょう。

彼らが「叱られない時代に育ってきた」から、と考えるとスッキリします。

もう少しだけ解説させてください。

こう考えてみるとどうでしょう。

もし、我々が先生や先輩から〝ビンタ〟をされたらどう感じるか、です。

到底許せないでしょう。でも、昭和の時代は、普通にあったことです。

今、ビンタなんてする先生や先輩なんていません。これが育った環境の違い。

時代とともに、指導の在り方が変わっていくことは必然なのです。

でも、ここで 絶対に気をつけないといけないのは過剰適応 してしまうことです。

何があっても部下を叱ってはいけない、と考えるのは絶対に早計です。

その弊害は確実にあります。  部下の将来を考える上司ほど、そのことが気になるため、不安になるわけです。

叱らず部下に言い聞かせるスキルは今のリーダーに必須のスキルかと。僕は昭和の人間なので叱られて育ったタイプの人間です。そんな人たちにおくる令和の指導術。それでも叱る必要があるときはあるかと思います。そんなシチュエーションでの対処の方法を学んでいく。

「特にやりたいことはない」という部下へのアプローチ

さて、この「Will-Can-Must」を進める際には、まず、最初に部下のWillを聞くことから始めます。問題は「やりたいことは、特にないです」と言われた時。

私の経験では、「ある」と回答する人は、 10%前後しかいません。

この場合、部下にWillがないのではなく、整理ができていないだけ。

時には部下の勘違いもあります。「野望かぁ…」と大げさに考えすぎる人もいます。

まず、整理をしてあげましょう。Willを3つのレベルに分けて聞いてみてください。

1つ目は、「直近のWill」。今の業務でやってみたいことを聞きます。

例えば、早く主任になりたい、後輩を教える役割がほしい、表彰されたい、といったことです。早く帰る、というのでもOKです。

2つ目は、「将来のWill」。将来やってみたいこと、理想の未来を確認します。

例えば、「いつか自分で商売をしてみたい」「ワークライフバランスを大切にしながら家族と過ごしたい」といった理想像を語ってもらいます。

でも、実は、この2つのWillを聞いても、出てこない場合は多いものです。

そんな時は、 3つ目のWill。「仕事で大事にしたい価値観」 を確認します。

まず、「仕事で大事にしたい価値観を教えてもらっていいですか?」と尋ね、5個程度、挙げてもらいます。そして、その中から1位を選んでもらい、その背景を聞きます。そこにWillを見出す方法です。

実例を紹介しましょう。1位に「時間の効率化」を挙げた人がいました。その背景をたどると、「子供の時、親と一緒にいる時間が少なかったので、自分は家族を大事にしたい」といったような温かいWillが出てきたりします。

では、Willを聞く流れを整理しておきましょう。

まず「直近」と「将来」のWillを尋ねます。それでも出てこない場合は「価値観」を聞いてみてください。そうすることで、必ずWillを見出せるようになります。

仕事に対して特にやりたいことがないといった姿勢は最近の若者によくあること。野心がないというかなんというか。そんな部下のスイッチを入れる魔法の方法がWillを聞くという方法。「直近」と「将来」のWillを尋ね「価値観」を共有することで部下に寄り添う答えを導いていくことが上司の役目かと。

パワハラにならずに部下を操る方法論。うまいこと部下のやる気を引き出し仕事の成功につなげ、その成功体験で仕事のやりがいなどを感じるように方向づけしてあげる。そんな令和時代の指導法がここに。

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