ジョブズが見出だし赤字時代を支え、『トイストーリー』で大ヒットを飛ばし、株式公開やディズニーによる買収を経たピクサー。小さなクリエイティブ集団をディズニーに並ぶ世界一のアニメーション会社に育てたファイナンス戦略とは?
ビクサー派、スティーブ派
「ピクサーとスティーブは、いろいろとあったんですよ。あまりよくない話が。まだご存じないと思いますけど、みんな、スティーブにびくびくしながら働いているんです」 「というと?」 「スティーブはピクサーのなんたるかがわかっていません。ここは芸術系のクリエイティブな場なんです。みんな家族的で、仲間を大事にします。トップダウンも似合いません。ここにいる人は、みんなそれぞれ自分の意見を持っていますからね」ピクサーの文化を知ることができるのはありがたかったが、このときは、それよりもスティーブに対するパムの感情の激しさが気になった。 「スティーブはオーナーだけど、でも仲間じゃない。評価されていない、認められていないって昔っから感じるんですよね。そんなだから、彼がもっと近づいたらピクサーはだめになる、我々の文化が壊されてしまうとみんな心配しています。そこに、あなたが送りこまれてきたわけです。我々をむちでまとめるために」最後は、ある意味、そのとおりだ。私はピクサーを立て直しに来たわけで、変化を生みだすのが仕事だと言えば言える。 「まだあります。彼は約束を破った。だから、みんな、怒ってます」 「約束?」 「ストックオプションですよ。約束したのに、結局、実現してなくて。それをどうにかするのもあなたの仕事かもしれませんけど、ともかく、放置が1日伸びるたび、みんなの目がどんどん厳しくなってますよ。ほんの少しでもピクサーが自分のものになる日を何年も前から楽しみにしてきたんですから。ほかの会社に行った友だちはみんなそれなりのものを手にしています。それだけに、ピクサー社員はいらいらが募るんです。おれたちはいいように使われるだけかって。みんなの信頼を勝ちとるのは容易じゃないと思いますよ」
ジョブズとの関係で語られることの多いピクサーだが、内部ではこんな軋轢があったとは。やはりジョブズはオーナーであり仲間じゃないというのにはなるほどと思ってしまう。
芸術的なことをコンピューターに
『トイ・ストーリー』完成に向けて会社が努力しているあいだ、私は、その公開でどのくらいのお金が得られるのかを把握しようと努力していた。契約から概算すればだいたいのところはわかるが、それは推測にすぎない。アニメーション映画が事業戦略になるのかどうかを考えるためには、収益構造をきっちり理解する必要がある。問いそのものはシンプルだ。映画はどこから収益を得るもので、その収益はだれの懐に入るのか、だ。言い換えれば、映画館で売られたチケットとポップコーンの代金はだれの収入なのか、だ。映画館か? 配給会社か? 制作会社か?こんな基本的なこともわからないのでは、最高財務責任者を名乗る資格などない。このあたりを学ぶため、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの財務を統括するティム・エンゲルから話を聞くことにした。彼は、『美女と野獣』、『アラジン』、『ライオン・キング』など近年の成功を実現してきた経営チームのひとりである。紹介されたとき、親切にいろいろと教えてくれそうだと感じたのだ。「映画事業の収益について細かいところがよくわかりません。そのあたりをディズニーの方に教えていただければと思うのですが」 「お力になれればいいのですが、残念ながら、そのあたりは社外秘となっておりまして」驚くには当たらない回答だ。ビジネスモデルは隠そうとするのが普通だ。だが、例外的な取り扱いにしてもらえないかと淡い期待を胸にもう一押しすることにした。「我々としては、制作した映画からどういう形で収益が上げられるのか、知らないと困るのです。今後、契約に定められたほかの映画について計画を立てるにも、そういう情報があると助かります」
ディズニー映画の凄いところは上映後もDVDやブルーレイで繰り返し見たいというユーザーが多いところ。子供から大人まで人気があるのでそれが可能になるのだろう。子供の頃ってもう何回見ただろうと思うような作品でも飽きずに何度も見て台詞を覚えるぐらいまでハマるといった経験を持つ人も多いだろう。
世界一のアニメーション企業の今まで語られることのなかったお金の話。小さな集団から一大企業に成長するに至った経緯はこれから大企業になっていくかもしれない数多のスタートアップには希望に映るだろう。
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