人口が減少する一方のこの国でAIは救世主足りうるのか?AIで未来がどう変化していくのかの未来年表を2人の専門家が語ります。
ゼロ成長時代への突入
日本の経済成長率については、二〇二〇年代後半に早くもゼロ成長時代に突入するという予測があります。要因は、まさに少子高齢化に他なりません。こうしたなか期待されるAIによる新たな革命は、一般に「第四次産業革命」と言われます。もうこの革命は始まっていると言う人もいますが、私は二〇三〇年ごろになると予想しています。AIは今ブームですが、まだ大して普及しておらず、そのころでないと、AIが生産性の向上に与える影響が、マクロ的な統計に表れてこないからです。なお、現在、囲碁や自動運転など特定の分野に特化した「特化型AI」が実用化されていますが、二〇三〇年ごろには人間のような知的作業をこなせる「汎用AI」の開発の目処が立つと言われています。「汎用AI」で、経済や社会のあり方が大きく変わる可能性があります。
人口が減っていく以上ゼロ成長は不可避なのか?AIの導入などでそれを補うことは可能だろうか?社会や経済のあり方も変えていかないとこのままゼロ成長時代に突入してしまう。だがゼロ成長ってそんなに悲観するものなのだろうか?特段ネガティブになることはないのではないかと僕は思う。
人手不足
人手不足は二〇三〇年ごろまでかなり深刻に続く可能性があると思っています。よくAIに関して、「人間の仕事を奪う」ということが言われます。技術の進歩によって失業が生まれることを「技術的失業」と言いますが、これはAIでも必ず起きます。ただ、この頃は、その影響が業界、業種によって異なる〝まだら模様〟になるのではないでしょうか。今でも人手不足が深刻なのは、建設業や飲食店、介護の分野です。そのような分野は人が体を動かして作業することが多いので、AIが人の代わりになるには、AIとともにロボットを作らないといけません。研究開発が二段階必要なんです。そうすると、研究開発の進歩というのは遅いということになります。河合 どういった仕事がAIに置き換わるとお考えですか。 井上 やはり巷間言われるように、すでに技術が進んでいる自動運転車によりタクシードライバーが失業するとか、ドローンにより配達員が職を失うということは少なからず起きると思います。ただ、それは二〇二〇年代前半以降徐々に進行するものと予想されます。一方で、現在既にIT化が進むことで少しずつ仕事が減っているのが「事務職」です。文章の作成や解析、事務手続きなどの効率化はAIを含むITが得意とするところです。なかでもこれから一番目立って技術的失業の問題が深刻になるのは、銀行業だと考えています。銀行員の仕事はかなりの部分がAIで代替できるからです。銀行業はすごく若者に人気がある就職先だと思いますが、こういったところでむしろ人手が要らない、余ってしまうということが起きる。一方で、建設業や飲食店で人手不足になる。そうした〝まだら模様〟になると思っています。
人手が足りないところに人が回らないのが人手不足の原因であって、AIやITの普及によって人が余っている分野は結構多くある。求人を出しても人が集まらないような仕事こそ給料を上げるとかしてなんとか人手不足を解消する方向に行かなければこの先、構造の崩壊が待ち受けている。
戦略的縮小
今後日本は、「二十世紀型成功体験」と訣別し、「戦略的に縮小」しながら、コンパクトな社会を作り直していく必要があると考えます。 一つの例として、居住エリアを決めて人々が市街地区域に集まって住むという案が挙げられます。そのエリアでは社会インフラが整備され、住民が不自由なく暮らせるだけの行政サービスや民間サービスが提供されるというものです。現在、先祖代々の土地を守るために山間部などに住む高齢者も少なくありません。医師が往診に行こうにも、一日数軒しか回れないというケースが往々にしてあります。医療にかかるコストが非常に高い。しかし、居住エリアを決めてみんなで集まって住めば、そうした高コストも医療難民もなくなる。ヒト・モノ・カネが集約すれば、ビジネス面でも情報や技術の共有、波及が起こりやすくなるメリットもあります。井上 賛成です。私は、そうした考え方を「多極集中」と言っています。各都道府県の県庁所在地なり大都市に集まって住むと、結局インフラのコストも安く済みます。AI関連で言うと、最近は「スマートシティ」に注目が集まっています。街全体をAIでコントロールして、高齢者をはじめ人々が暮らしやすい街を目指すという構想です。
コンパクトな社会を考える上でスマートシティは考えるに値するものだろう。都市部に人口を集中させることで消費も盛んになるだろう。
AIで未来はどうなっていくのか一つの答えがここにある。人口減少社会における暮らしのあり方がここに。
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