最近では僕の罹患している統合失調症も脳の働きによるもので薬の作用によってその症状を緩和できるようになっている。薬が手放せないがこれも自分の個性だと思えばうまく付き合っていける。精神科の診断にメスを入れた書籍。
精神科診断の曖昧さ
精神科の患者は他科の患者と違って、症状を隠すことが珍しくない。「死んだおばあさんが耳元で囁いていろんなことを教えてくれる」というような、医者にとっては最高度に重要な症状を隠しながら、本人の訴えたい別の症状だけを訴える場合がある。患者の表情・態度からこのような可能性を疑うことは、研修医には難しく、やはり経験のある医者でなければできない。さらに、他科と違って、精神科的診断にとっては生活史がたいへん重要であるが、患者は初診時には生活史の重要な部分(たとえばトラウマのもとになった事件など) を隠すことが少なくない。生活史について、初診時に通り一遍の聴取をしただけで、後は症状の増減だけに従って薬物治療をしていた場合、いったん患者と医者の関係が悪くなった後では、最初に隠していた生活史の要素が訊き出せる可能性はほとんどない。結果として、最初の医者による生活史の聴取と記載はほとんど価値がなかったということになるのである。だから、「別の目でみてほしい」と言われた精神科医は、患者の表情・態度について自分の目でじっくりみることに加えて、生活史をじっくり聴き直すべきである。しかし、前の医者に隠していた生活史の要素を、次の医者には初診で隠さずに話すということは、もちろん期待できない。そういう要素は、患者の病気にとって最も重要な病因的要素である可能性が高いのだが、それは医者が患者と長く付き合い、かなりの信頼を勝ちとって初めて、やっと手に入れることができる情報なのである。そして、これまでの主治医に不満をもっていて、ほかの医者にかかりたいと思っている患者のなかには、実際にこういう種類の人が少なからずいるものと考えられる。
僕も精神疾患を患っているものなので、診察については精神科受診あるあるだなと思った。患者が医師に話したいことと、その病気の症状の一部とは必ずしも一致しないため、それを引き出すのが医師の役目となる訳だが、僕の場合、入院をしている間(計6ヵ月)に他の患者との対話の中でその精神疾患症状について客観的に見ることができるようになり診断でもその点を医師に伝えられるように。同じ境遇の人との関わりは治療を前進させるための要因になりうるのではないかと思います。
経験・経過・予後
精神医学の研究分野としての「性質の悪さ」を最もよく表している疾患は、やはり統合失調症だろう。統合失調症という疾患概念が、一九世紀末にクレペリンが提案した「早発性痴呆(dementia praecox)」に始まるということは、精神医学史の定説である。クレペリンは統合失調症(早発性痴呆) と躁うつ病という二大精神病を確立したのであるが、それは、当時「内因性」と呼ばれていたところの、なんらかの身体的原因があると推定されるにもかかわらず、その原因が不明な精神疾患群を、大きく二分したということにほかならない。そしてその二分法の最大の指標は、思考の障害と感情の障害といった臨床症状の違いではなく、長期的な経過と予後の違いであった。すなわち、統合失調症(早発性痴呆) は慢性進行性の経過を辿り、最終的に荒廃状態に至るのに対し、躁うつ病は急性反復性の経過を辿り、荒廃状態には至らず、社会適応が保たれる。実際には多くの例外や中間型があっただろうが、とにかく二大精神病の概念は、時間軸上の経過・予後によって構築されたのである。「統合失調症(Schizophrenie)」という病名を作ったのはクレペリンより二歳だけ年下のオイゲン・ブロイラーであるが、ブロイラーはクレペリンによる早発性痴呆の概念をほぼ完全に受け入れていた。それなのになぜ別の病名を提案する必要があったのかといえば、この疾患についてのとらえ方を変えたからである。クレペリンの早発性痴呆は疾患の経過、つまり時間軸(=縦断面) によって定義されていたのに対して、ブロイラーは、それではかなりの時間をかけなければ診断ができないので、臨床症状(=横断面) に基づいて初診時に診断ができるように、この疾患を臨床症状によってとらえ直そうとしたのであった。
統合失調症の予後は必ずしも暗いものではない。三分の一は長期入院を余儀なくされ、三分の一は社会復帰し、そしてまた三分の一は中間的な社会適応すると言われている。僕は最後の中間的社会適応に当たるのかなと思った。統合失調症というと昔ていうと精神分裂病で何かと社会から色眼鏡で見られてしまう病名だ。最近でこそ社会的に認知が進み昔ほど嫌がられなくなったが、ネット上ではいまだにバッシングし続ける人が多数いるのは事実。
精神病にかかった人が受ける様々な不利益と、治していく上での基本問題が書かれた書籍。信頼できる医師との出会いがその後の病気との向き合い方を左右します。ご自身はもちろん家族に精神疾患を抱える人がいる場合には読んでおいて損はないかと思います。
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