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インドが日本を抜き去る日はまもなくやってくる!

中国と日本の間にインドが割って入り、「中印二強」時代がやってくるのはもはや時間の問題である。インドの成長で、中国の台頭によって引き起こされたものと同様の激変がアジアで起きる――。本書は、政界、経済界のみならず、庶民の生活にも深く分け入った元朝日新聞ニューデリー支局長が、チャイナ・パワーに対峙しつつインドを取り込もうとする日本の戦略を軸に、10年後、20年後のアジアと日本を考えるための手がかりを明示したルポである。

急速な経済成長をとげるインド

インドは今、急速な経済成長を続けている。現在の七パーセント台成長を維持すれば、一〇年ほどで日本の国内総生産(GDP)を総額で追い越し、米国、中国に次ぐ世界第三位の経済大国となることが予測されている。それに伴い、インドの社会構造は大きく変化し、一方で対外的にも外交・軍事面での存在感が著しく大きくなっている。さらに国連の推計では、人口面でも二〇二二年までに中国を抜き、世界最大の国となる。「一人っ子政策」のような人口抑制策を行ってこなかったため、社会の高齢化がすでに問題となっている中国を尻目に、今後も労働人口の膨張と人口ボーナス効果が続き、成長の追い風となることが予想される。

中国が日本のGDPを抜いたのが2010年。それからわずか数年で「中米二強の新時代」を公然と語るようになった中国。それでも一人っ子政策による高齢化で労働人口の膨張に歯止めがかかった。インドではそれがないのでこれからも人口ボーナス効果による成長はしばらく続く見通しだ。

旅行先でアジア人と見れば、「コンニチハ」と日本語で話しかけてきた外国人も今では「你好(ニーハオ)」に変わってしまった。国際社会では日本の勢いはどんどん落ちている反面、爆買い中国人の台頭は目を見張るものがある。それと同じでこれからはインドの人々が国際社会で力を握る存在となっていくのだろうか。

インドの窮地を救った日本

日印が接近するきっかけとなったのは、一九九一年に起きたインドの経済危機だ。外貨準備高が底を突き、デフォルト(債務不履行)の直前にまで追い込まれたインドに手を差し伸べたのが、日本だった。三億ドルの緊急借款と、アジア開発銀行からの一・五億ドルの協調融資で、インドは危機をしのいだ。危機打開のため前述のように経済開放政策を展開し、その後の発展の土台を築いた。財務相としてあちこちに支援を求め、かけ合ったマンモハン・シン(のちに首相)は、駐インド大使小林俊二の手を両手で握り、涙を浮かべて日本の援助に感謝したという。シンはその後も日印首脳会談などの際に繰り返し、日本に感謝する言葉を述べている。シンは二〇一四年の総選挙後に下野し、政界を引退した。同年秋、日印関係の強化に尽くしたとして、インド人として初めて桐花大綬章を受章した。

日本が国際社会で一定程度の良い評価を得ているのは、こうした危機に対して援助を惜しまないお国柄だということが挙げられるだろう。日本だって財政が良好とは決して言えない状況でも国際社会で役割を果たしてきている。これが世界から高評価を得ている原因だろう。他国から感謝される国に住んでいるというのは国民としても誇りに思うべきところではないだろうか。

ハイパーループ構想に興味を示すインド

マスクは、日本も参入をめざすサンフランシスコーロサンゼルス間の高速鉄道建設構想(総工費七〇〇億ドル)に対して「高すぎて、遅すぎる」と反発し、ハイパーループ構想を立ち上げた。マスクはさらに、構想の内容をすべて公開し、「やる気と技術があればだれでも参入可能」というユニークな方針を打ち出しており、米国ですでに二つの企業が立ち上がり、実現に向けた研究開発を初めている。そのハイパーループ・ワン社は二〇一七年二月、デリーで発表会を開き、デリーームンバイ間を八〇分で結ぶという構想を公表した。実現すれば航空機に乗るよりも早くなる。

デリーで開かれたこの発表会にはプラブ鉄道相も出席「我々はあらゆる新技術の開発を重大な関心を持って見ており、鉄道の近代化に向けて努力を続けている」と発言。ハイパーループ構想に興味を示した。

「英語・数学大国」の実像

今のインドで英語を流暢に話せるのは、四パーセントほどだという。「一定レベル話せて意思疎通ができる」とまで定義を広げると、その数は二〇パーセントほどとみられる。この「四パーセント」「二〇パーセント」という数字をどう考えるか。これが、インドに対する見方を大きく分けるのだ。

パーセンテージで見るとそれほど大きな数字とは言い難い気もするが、なにせインドの人口は一二億超「四パーセント」は五〇〇〇万人を超え、スペインの総人口を上回る数だ。さらに二〇パーセントとなれば二億人を超えることに。

勢いに乗っているインド。国が持っているポテンシャルは凄まじく、超大国をめざす巨象の行く末は世界が注目している。中国との比較も含め、インドが沸騰していることは間違いない。数学大国のイメージが強くIT系の人材も豊富なインド、日本の企業もこうした人材を抱えるところは増えてきている。インドの今を知るのに最適な一冊。

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