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日本型組織の病を考える|村木 厚子

組織でお偉いさんと言われる人々による不祥事が後をたちません。そこには日本型組織の病とも言えるべき構造の本質が。一般市民からすればどうしてそんなことで今までのキャリアを無駄にしてしまうのか疑問でなりません。そんな組織について考える書籍。

公文書改竄、セクハラ、日大アメフト事件

官僚の問題だけではありません。鉄鋼、自動車などの日本を代表するような大企業で、製品の品質データが改竄されていることが、いくつも発覚しました。日本大学アメリカンフットボール部の事件などもそうです。同大学の常務理事も務めていたアメフト部の監督が、「相手のクォーターバックをつぶすなら試合に出してやる」と学生に指示して、相手選手に怪我を負わせたとされる事件です。近年の不祥事の背景には、共通点として、同じような人間ばかりが集まった極めて同質性の高い組織の中で、組織の圧力から生み出された「常識」と、社会の「常識」とが、いつの間にか、かけ離れてしまったことがあるように感じます。もともと日本は他国に比べても、極めて同質性の高い社会です。第二次世界大戦以降の日本の復興、その後の経済成長は、その強みがいかんなく発揮された「成功体験」といっていいでしょう。しかし、その強みは、だんだんとこの社会の弱点となりつつあるように思われます。そうした問題について、本書では「日本型組織の病」という言い方をしています。

日本の様々な組織。ちょうど過渡期といってもいいだろう。日本型の組織の病は変革を求めているのだ。今までの常識はすでにもう通用しない古臭いものになっている。日本に巣食うそんな病巣を変えていかなければならないのだ。

話をつまみ食いして作られる供述調書

驚いたのは調書の作り方です。被疑者や参考人が話したことを整理して、文章にするものだとばかり思っていました。実際は、全く違いました。検察は、自分たちのストーリーにあてはまる話は一所懸命聞き出そうとするけれど、自分たちに都合の悪い話は一文字も書こうとしない。自分たちの裏付けに使えるか、使えないかの一点のみで証拠が検討され、使えないものは無視されていきます。そして、私の話の中から、自分たちが使いたい部分だけを、都合のいいような形でつまみ食いして書いていくのです。これには本当にびっくりしました。例えば、こんなことがありました。取り調べが始まって十日ほどたった頃、詳しい調書を作ったので見て下さいと、検事が長文の調書を持って部屋に入ってきました。読んでみると、係長や偽の障害者団体関係者らの悪口がたくさん書いてあります。私は、事件の真相が全くわからない中で、誰かを悪人にしたり、犯罪者にしたりするような言い方だけはすまいと注意していたので、「こんなことを言った覚えはありません。サインはできません」と突き返すと、直したい部分を言って下さいと言います。「部分的に直して済む問題じゃありません。これは私とは別の人格の調書です」そう言うと、「これは検事の作文です。筆が滑ったところがあるかもしれません」と言って直し始めました。二度、三度とやり取りをして、何とかまともな調書になったのでサインしようとすると、「最初のものとだいぶニュアンスが変わっちゃったから、ちょっと上に確認してきます」と言って、調書を持って出て行ってしまいました。取り調べの現場にいない上司が「これではだめだ」と言ったら、また変えるつもりなのでしょうか。 啞然 としたのを覚えています。

弁護士もののドラマで繰り広げられるような検察と弁護士の攻防が実際にあるのだということがありありとわかる。検事の作文とはよくいったものだ。検察が描くストーリーで調書が取られていく。それがブレることはない。無実の人間にとってはとてつもなく怖い世界だ。

「執行猶予なら大した罪じゃない」なんて!

取り調べの最中、一人目の検事とのやり取りで、めったに怒ることがなく、人から「怒りの沸点が高い」と言われる私が、心底、怒って抗議したことがあります。 「執行猶予がつけば大した罪ではない」。そう言われた時のことです。えっ、それって有罪と認めるということですよね。今まで公務員として三十年間築き上げてきた信用はどうなるのか。公務員にとっては信用こそが命なのに、執行猶予なら大したことはないなんて。私の価値観、常識からはかけ離れた発想で、とても受け入れられません。ショックでした。そもそも、偽の障害者団体の金儲けのために偽の証明書を発行するなんて、そんな情けない罪を認めるぐらいなら、恋に狂って男を刺して罪に問われた方がまだましです。さらに驚いたのは、「執行猶予は大した罪ではない」というこの言葉を、二人目の検事も同じように口にしたことです。そういう感覚が、検事全体に蔓延しているのでしょう。一種の職業病です。それまで取り調べではしっかりと感情を抑えていた私が、このことだけは許せないと、思わず涙を流して抗議しました。

執行猶予なら大した罪じゃないという言葉には驚きを隠せない。実際に罪を犯した人間にとっては、執行猶予は軽い刑かもしれないが、無実の人間が執行猶予付きの判決を受けるということは、有罪が確定して、無実の罪を着せられるということ。到底承服できないだろう。

冤罪と戦った著者の生々しい体験談が日本型組織の病を象徴している。繰り返される不祥事の本質とは一体どこにあるのか?これからもまだ、この手の不祥事は繰り返されるだろう。日本型組織が瓦解するまで‥‥。

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