奇跡の生還を果たしたあとのリハビリの苦しさを患者側の視点から描いた書籍。リハビリの励む人への応援歌となると思います。
かすかな指の動き
事故から1週間が経った頃でしょうか。そばに付き添っていた雄三の妻が、指が動いたような気がすると教えてくれました。右手の指が動いたと言うのです。最初、担当の医師には単なる「反射」ではないのか、と言われました。しかし、後日、それは明らかに雄三の意思であることがわかったのです。その1週間後、今度はほんの少しですが、右足がピクリと動きました。 「これは気のせいではない」と確信しました。医師はまだ、なんとも判断できないような様子でしたが、私としては、とにかく「動く」という事実をうれしく思いました。 (右の手足だけでも動いてくれるなんて、ありがたい)そう思う一方で、左側は無理かもしれないという思いもよぎりました。悲観的な考えを振り払うためにも、私はひたすら右手と右足をさすり続けました。その思いが通じたのでしょうか。左足、続いて左手も、かすかではありますが、動き始めたのです。
事故などで大怪我をした後って大変。僕も妹が交通事故にあって入院した時、病室に見舞いの連中が来て喋っているだけでも頭がガンガンするから静かにしてと要望することがあった。それとは比べ物にならないぐらいの状態に陥った著者一家はかすかな呼びの動きも希望に満ちたものだったことが想像できます。
小さいけれど確実な変化
口腔ケア、口腔リハビリを始めたのは、9月 16 日です。これは「口からものを食べる」ということを前提としたリハビリです。「胃瘻が必要」という診断を、雄三は覆したのでした。「雄三さんが好きな食べ物で、はっきりした味があって、口にちょっと入れて味わえるものはありますか?」リハビリを担当してくださった方からこう聞かれて、私は雄三が梅干しが好物だったことを思い出し、「 練 梅」を使うことになりました。練梅をほんの少し、口に入れて舐めているとき、雄三はそれを味わっているように見えました。舌を動かすことや、好きな味覚を味わうことも、重要なリハビリなのだそうです。リハビリが始まるということは、「今後の人生」を意識し始める段階になった、ということが言えます。病院のスタッフは、この時期から私や雄三の妻に対して、さかんに「よくなってから」を意識させるための問いかけや指示をし始めました。 「退院」について現実的に考えなければならない時期が迫っていました。患者も家族も「一命を取り留めることができた」という安堵感に、いつまでも浸っていることは許されないのです。
胃瘻が必要と言われたのに奇跡の回復で口からの食物の摂取が可能になった著者。退院した後も口からものを食べられるというのは重要な要素。好物を口にしたことで食べる喜びを取り戻すことはよくあるそうでそれが回復に向かう過程で重要なファクターとなる場合も。
医師の不注意な一言が患者を傷つけることも
医療のおかげで雄三が生きている。それは紛れもない事実です。その前提があるために、患者と家族は「医師の言うことを聞かなくてはならない」「医師の言葉は絶対だ」という感覚を持つようになります。患者と家族は、いわば医師に身を委ねている状態です。とくに、雄三のように九死に一生を得て回復の途中にあるようなケースは、医師の言葉、表情のひとつも自分の命に直結するものとして受け止めるようになります。医師の何気ないひと言、不用意な発言、それが患者や家族にとって、どれほど大きな影響力を与えるのかを、私はこの一件で思い知りました。同時にリハビリ士のAさん、Bさんに救っていただいたことに、今も心から感謝しています。雄三の異変にいち早く気付いてくださったAさん。そして、Bさんには「患者本人の心身の痛みにいち早く気付き、医師にそれを伝えるのも家族の役割だ」ということを教えていただきました(もちろん、伝えた後の判断は医師に委ねることになりますが‥‥)。
患者は医師の些細な言葉も聞き逃さない。医師の態度一つとっても患者にとっては大事。僕もオーバードーズで胃洗浄を受けている際、処置に当たった医師が海外旅行の思い出話をスタッフ同士でしていたことがあり本当にこの人たち大丈夫か?と思ったことがある。今思えば、処置は簡単なものなので余裕を見せることで安心感を与えようとしたのかもしれないと思っていますが。
余命宣告から奇跡の生還を果たした例だが、読んでいて気が重くなる書籍だった。回復の過程は平坦ではなくそれを表現するには仕方ないのかもしれないが。
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