「優位戦」とは、こちらが主導権を握って“戦場”を選び、時を決め、目的も手段も決められる戦いのことである。そうした「優位戦」の思考を持てば、「劣位戦」に追い込まれることなく自分の利益を確保できる。欧米の政治家や外交官、経済人は、そうした思考に長けている。国際貿易や産業・環境技術などの新ルールを中核メンバーだけで、自分たちが有利になるように決め、あとで日本などに参加を呼びかける。「入らないと孤立するぞ」と脅かすと、日本は慌てて飛んできて、必死に追いつこうとする。従来の日本がそうであり、それは典型的な「劣位戦」だった。だが、風向きは変わりつつある。安倍晋三首相を筆頭に、優位戦思考で交渉を展開する日本人が出現している。そうした人士はビジネスの世界では珍しくないし、実は戦前の日本にもいた。それがわからないのは、劣位思考に陥ったままの政治家、学者、マスコミだけである。
「日中関係悪化は尖閣諸島国有化以後」は本当か
中国との関係において、ほとんどのマスコミが「尖閣諸島の国有化以後悪化した日中関係」と伝えているが、これは正しい認識か。石原慎太郎氏が都知事時代の平成二十四年に尖閣諸島の購入計画を表明し、都民、国民から多くの拠金が寄せられた。そのとき「石原さんが尖閣購入を言い出さなければ、中国との間に問題は起きなかった」と言った政府要人もいたが、マスコミもそれに何の疑問も感じなかったようだ。だが実際には、平成二十四年の春先、中国共産党機関紙である『人民日報』が、「尖閣は中国にとって核心的国益であり、それを守るためにさらに果敢な行動に出る。そのために必要な機材も準備する」と宣言したことに始まる。これに対して、「現実問題としてこちらの懐に手を突っ込まれている状態で何もしないということはあり得ない。個人の日常にたとえても、その手を振り払うのが当たり前じゃないですか。私は何もしない政府に代わってでもあの島々を守るために取得し、灯台や船だまりなどのインフラも整備してあの島々を守らねばと決心し、それに呼応して数多の国民から献金が寄せられたわけです。国民の国防意識の高さを汲まずに不作為を続ける政府に非難されるいわれはない」と述べた石原氏の認識は間違っている。
実際は、東京都が尖閣諸島の購入を表明したことが日中関係悪化の引き金となったわけではなさそうだ。日本固有の領土である尖閣をそれ以前の中国は「奪取」宣言していたことを日本のマスコミは鈍感にも気付いていなかったのある。
明治開国以後の日本から得る教訓と発想
明治開国以後の日本人は、いったい何のために苦闘してきたか。それは国家としての「独立を守る」ことにあった。植民地を求める白人列強によって鎖国を解かれて以後、日本が白人列強と対峙しながら独立を維持しようと苦闘してきた歩みは、白人近代国家対唯一の有色人種による近代国家という図式にせよ、帝国主義下における先発国と後発国という図式にせよ、常に孤独なものだった。日本は何事においても独力で対応せざるを得ず、産業力や科学技術においても劣位からのスタートであった。だが、それは日本人が本質的に劣等であったということではない。江戸時代までの文化的な蓄積がいかに特筆すべきものであったかが理解できれば、その後の日本の急速な発展も自ずと明らかになる。ペリーの来航とその軍事力に驚いた日本人は、同時に欧米の背中が見えていた。追いつけると思った。明治四(一八七一)年の岩倉使節団の報告書『米欧回覧実記』によれば、当時の日本の指導者はスタートの差をおおよそ五十年と見て、追いつくのは四十年かと考えていたことがわかる。
ペリーの来航無くして現在の日本の発展はなかったのではないかと思う。自動車産業が勃興し世界で戦えるレベルまで押し上げたのもライバルとなるその他列強の存在あってのこと。お国柄か、ガラパゴス化した産業もあるが、それがクールジャパンとして世界から認められる要素として重要な位置を占めているのも特筆すべき点だ。
自身を小さく見せる傾向にある日本人
日本人は狭小な国土のせいか、あまりにも自身を小さく見る傾向がある。必要以上に謙虚なのは他者を誤解させることに繋がりかねない。狭小な国土=非力というのは、冷静な分析に立ったものではなく、一種の趣味のような態度で、ドイツやフランスなどのヨーロッパの列強が、相互の国力比較をまず領土面積から始めているのに習っているにすぎない。
日本人の美徳として自分を必要以上に大きく見せないというのがある。それは国土が小さいのが原因かどうかわからないが、自分たちの立ち位置を冷静に分析できているとも言えるのではなかろうか。
優位戦思考という聞きなれない言葉で日本の世界における立ち位置を確認する書籍。優位戦思考とは何か――。アメリカの小噺に、こういうのがある。〈メリーちゃんとマーガレットちゃんは大の仲良し姉妹でした。あるとき、「オヤツの時間ですよ」と言われて2人が行ってみると、テーブルにはケーキが1つしか載っていませんでした。メリーちゃんは「マーガレットちゃんの分がない」と泣き出しました〉これが優位戦思考である。自分のケーキを確保した上に妹の分がないと嘆くことでいいお姉ちゃんという評価も得ることができるのだ。
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