世界同時不況のさなか、日本には民主党新政権が誕生した。冷戦が終結して二〇年が過ぎ、長く続いた戦後体制は名実ともに変わろうとしている。日本と世界は今どこへ向かっているのか?長く世界潮流を観測してきた著者が、“時空を超える視座”“相関という知”を踏まえて、“分散型ネットワーク時代”の新たな展望と日本の針路、いま最も必要とされる「全体知」のあり方を提示する。米中二極体制をどう考えるか?極東ロシア、シンガポールの地政学的な意味とは?「友愛」なる概念は日本の未来を拓くのか。
ボーダレスな時代
現代は、ヒト・モノ・カネ・技術・情報が、ボーダーレスに、つまり「境界なし」で交流する時代である。ラジオからテレビ、そしてインターネットへと、さまざまなメディアが登場・普及し、情報環境が劇的に変化して、わたしたちが認識できる「世界」は限りなく広がったようにも見える。「わたしは、いながらにして世界のすべてを知ることができる」と強弁する人がいたとしても不思議ではないだろう。だが、わたしたちの「世界を知る力」は、単純に、交通手段や情報環境の発達と正比例して向上するものだろうか。残念ながら、答えは「否」である。人間は、所詮、時代の子であり、環境の子である。わたしたちの認識は、自分の生きてきた時代や環境に大きく左右される。ある意味、閉じ込められているといってもいい。認識できる「世界」はきわめて限定的なのであり、時代や環境の制約によって、認識の鋳型ができてしまうから、場合によっては、大きく歪められた「世界」像しか見えなくなることもある。わたしたちは、そういう宿命を背負っているのである。
多様性やボーダレスといった言葉が氾濫するこの時代において、まだまだ現実的にそれらが浸透していないということではないだろうか。多様性が認められボーダレスな社会になったらどんなに素晴らしいことだろうという願望も込めてのことだろう。実際それを肌感覚で感じることができることがある。それは僕が精神疾患による障害者だということ以前と比べ統合失調症であることを告げても偏見を持たない人も増えてきた一方で、まだまだ理解が行き届いていない感がある。見た目が普通でパッとみ、障害者とわからないので、それを告げるとなんだよ普通に見えるのにという反応をされる。まだまだ心の病気は気合いでなんとかなるという勘違いをした人が大勢いることは確かだ。
シンガポールの発展に見る世界
シンガポールは淡路島ほどの面積もない小さな都市国家だが、ここ数年、シンガポールを訪れるたびに、中国本土から中国人が大挙してやってくるのが目につくようになった。二〇〇七年には年間六万人といわれていたが、すでに一〇万人近くになっているといわれる。やってくるのは金持ちになった中国人だ。観光やショッピング目的かと思えば、そうではない。彼らは、医療を受けるためにシンガポールを訪れるのである。なぜ、シンガポールなのか。それは、シンガポールでは他の国では受けられないような先進医療を受けられるからである。ゲノム科学、バイオテクノロジーの先端的な研究を背景にした高度先進医療の展開が、金持ちになった中国人を磁力のように引きつけているのだ。そもそも、シンガポールは、「大中華圏の研究開発センター」ということができる。メディカルセンターであるばかりか、ITやゲノム・バイオ研究の拠点として機能しているからである。経済的な言葉に置き換えるなら、中国の成長力をASEAN(東南アジア諸国連合)に取り込む基点のような役割を果たしているといってもいい。そのシンガポール資本が、あるいは香港資本が、いま上海付近に展開して、環境技術に関する実験的なプロジェクトを主導しようとしている。
高度な医療が外国からの評価が高いシンガポール。国策としてのゲノム科学やバイオテクノロジーなどの最先端技術の研究を背景として発展してきた。そこに高度な医療を求めて大陸から人が押し寄せるわけである。それが背骨となって、この資本が上海付近にまで展開するように。
アメリカをアジアから孤立させない
アメリカとの外交原則を確立するにあたって、「大人の関係」のほかに、もう一点重要なことがある。それは、「アメリカをアジアから孤立させない」ということだ。先ほども触れたように、いま世界は、国民国家レベルで見るなら、米中の二大国が主導する形で動いている。したがって、米中関係の洞察は、日本が国際社会で生きていくために欠かせない課題である。日本に求められていることは、キーワード的に語るなら「親米入亜」ということができるだろう。つまり、アメリカがアジアから孤立しないように配慮しながら、一方で、日本がアジアからの信頼を確立していくことである。いま日本は、アジアとアメリカをつなぐ「かけ橋」としての役割が期待されているのである。欧州においてイギリスは、アメリカの主張や利害を大陸欧州につなぎ、大陸欧州の意向をアメリカにつなぐ役割を担っているが、日本も、こういった役割を、アメリカと中国・アジアに対して担うべき時にきている。
米中の関係が覇権争いになっているのは間違いない。急速に発展してきたアジアはこれからまだ伸び代があるがレッドオーシャンと化していることが顕著なアメリカ。これからはアジア抜きにして経済成長はないのでそこに乗り遅れにようにアメリカも必死である。
世界を知れば日本の今が見えてくる。日本やアメリカ、中国や韓国の動向が日々ニュースとして取り上げられるが、世界を知ることでニュースを深掘りすることができる。無理にグローバル化に乗っかる必要はないかも知れないが、知ってて損することはない知識が得られます。
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