いまや世界の時価総額ランキングの上位はほとんどがアメリカ系。かつて世界に名を馳せた日本企業はすっかり存在感を失ってしまった。原因は何か?答えはシンプル。IT系の高付加価値な産業への転換に遅れているから。ではどうすれば、インターネットを駆使した生産性の高いスタートアップが生まれる環境をつくれるのか。それは、なるべく物を持たないが自らのスタイルに合うものには投資を惜しまず、カネではなく意義で動く「ミレニアル世代」の行動原理を掴むことから始まる。「共通の価値」でつながる人々の「トライブ」というキーワードを軸に、日本最大のビジネスSNSを運営する新鋭社長が、これからの働き方と幸福の形を提示する。
取り残される日本
製造業で勃興し、戦後の焼け野原から先進国に追いつき追い越したはずが、今やコモディティ化(かつて価格の高かったものがやがて平凡なものになること)の果ての価格競争から逃れられなくなり、製造業の次に来る産業を構築できずにいる。他方、アメリカでは早々に脱製造業を果たし、金融やIT系でより高付加価値、優れた生産性の産業に移行している。今や世界の時価総額ランキングで、上位5社は全て広義のインターネット産業に含まれる米系企業だ。このランキングで唯一ランクインしている日本企業はトヨタ自動車で上位30社中の28位だ。
付加価値の高さを比較してみて見ると、例えば4位のフェイスブックとトヨタの2016年度における利益・売上構造を比較する。時価総額はフェイスブックがトヨタの約2倍だが、それは圧倒的に高い利益率がもたらすもの。それに加えて今後の成長性も加味される。日本でも成長産業を生み出す必要性から「インダストリー4.0」とかAI、ロボットといったバズワードをよく聞くようになったが、芋の段階では問題意識を持ち始めた初期の段階だと言えるかもしれない。
ではこれからどうすればいいのか?単純にコモディティ化する技術を追っていくだけではダメだろう。テレビやスマホの画面の画素数を上げたり、ハイレゾで音楽が聴けるだけではもう「ミレニアル世代」の心を打つことはできない。なぜ多くの若者がiPhoneを選択するのかがわかっていない。世界の消費者や労働力の中心が「ミレニアル世代」になりつつあるのでこの世代にフィットした事業づくりや組織づくりが必要となって来る。
海外に目を向けて見ると、国内ではクールジャパンとかいってアニメやなんかを売り込む姿勢を見せているが、実際のところクールだなんて思っているのはマイノリティーでしかない。誰も日本のことなんか気にしていないし、海外の人が揃って口にするのは「どうして日本は起業家が少ないのか」とかそういった話ばかりだという。日本でビジネスをする人間たちはよく「金持ちのボンボン」という言い方をされる。つまり庭が広く高い塀で囲まれた平穏な場所で、ほとんどの国民が英語を話せない、謎の商習慣があり、外からは入りづらい環境で生きているのだ。暖かい部屋でゆったりと事業を育むことができる一方で、塀の外では通用しないような世間知らずな商品や組織が蔓延し、ガラパゴス化が進んでいく。
ものに対する価値観の変化
そんな中で特に大きのが、「もの」に対する価値観の変化だ。私自身、ものを所有するという行為に対してネガティブだ。ものの所有は喜びではなく、負担でしかない。だから可能であれば所有せずに、必要なときに借りたいし、それを可能にするインフラで世の中が溢れ始めている。交通手段としての「モビリティ」はウーバーが提供するし、宿泊・滞在の「バカンシィ」はエアビーアンドビーで提供される。オフィスも、キッチンも、カメラも結婚式のドレスも、何でもネットで簡単にレンタルできる時代になっている。ものがなかった時代から、産業革命によりものの生産がどんどん効率的になり、大量生産大量消費型社会が訪れ、それに飽きた消費者が自分のストーリーを追い求めるようになってきた。
冷静に考えて見ると、テレビが数ミリ薄くなっただけで買い換えるのは家電マニアの富裕層ぐらいだろう。冷蔵庫の消費電力が数ワット下がったところで今使っている冷蔵庫で不便がなければ買い換えることはないだろう。問題はこういった商品を手にした時、自分の人生のストーリーをどう彩ってくれるかだ。家電ならダイソンの掃除機やルンバなどは最新家電に囲まれれて生活している自分を演出してくれるだろう。
大ヒットの典型とも言えるiPhoneを見てみると、2015年の第3四半期、アップルは世界中の携帯電話の総利益のうち94%をしめ、サムスンは11%だけだ。これはどういうことかというと、iPhoneの平均販売価格が670ドルなのに対しサムスンは180ドルだからだ。この高い利益率を持って、イノベーションや設計、デザイン、マーケティングに挑む。自分を表現するツールとして最適だということからそのストーリーを消費者は求めるのだ。
「ミレニアル世代」が何を求めているかを知ることで、商品の開発者の自慰行為とも言える微妙な性能アップばかりに気をとられることはなくなるだろう。ストーリーを考えそれを持つ自分をブランディングできるような商品を求めているのが現代だということがわかる書籍。
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