● 科学的教養=真実とファンタジーを区別する力
● 読解力=国語が苦手なAIを超える想像力
これからのコミュニケーションに必要な基礎教養「STEAM」とは、“S(科学:Science)(技術:Technology)E(工学:Engineering)A(美術:Art)M(数学:Mathematics)" を指す。すでに欧米では、「STEAM」教育に力を入れている。AIが普及した世界では、ますます国籍や人種、ジェンダー、文化、官民の組織、企業、研究機関など、さまざまな立場の枠組みを超えたコミュニケーションが必要になる。その際に、助けとなるのが「STEAM」を備えた人材だ。さまざまなアプローチで科学を社会に最適化していく科学者たちの態度からは、社内外での企画やプロジェクトの実現といったビジネスの現場のほか、地域コミュニティ、さまざまな会合など、多くの利害を持つ者が集う場で、何かを実現する際に学べることが必ずある。
フレーム問題 「変なホテル」のロボット従業員
体験型ロボットといえば、長崎のハウステンボスに「変なホテル」という名前のホテルがあって、ご存知の方も多いかと思います。従業員がロボットのホテルで、受付では恐竜と女性のロボット3台が接客してくれます。わたしも宿泊してみたのですが、対応してくれた受付嬢ロボットは、それはニコニコと感じもよく接客してくれました。部屋のチェックインも館内の案内もバッチリ。ここまでは、優秀な人間受付嬢に遜色なかったのですが、それからサービスに異変が現れました。わたしはうっかりフロントデスクにバッグを忘れてしまったのです。すぐに気がついて取りに戻ったのですが、受付嬢ロボットは忘れ物に気づいておらずに、ニコニコと笑いかけてくれました。
あらゆるサービスを想定してプログラミングされたロボットでも、AIの学習以前のレアケースには対応できないという欠陥の最たる例だろう。やはり人間の従業員はバックアップとして必要だということ。そこにAIと人間との共存関係が生まれるのだと思う。ベテランコンシェルジュがどんな要望でも叶えるよう最善の努力をするように、AIがサービスを提供できるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。コンピュータは人間に与えられた「枠(フレーム)」の中でしかその能力を発揮できない。人間の世界でもこうしたマニュアルに沿った働き方しかできない人がいるが、そうした人たちはAIに仕事を奪われる可能性が高いということだろう。
一般教養としての科学リテラシー
わたしは、科学による裏づけのないうわさや思い込み、そして普段の生活の中で何の疑いもなく従っている制度や常識を「ファンタジー」と呼んで、真実と区別しています。もちろん、サンタクロースや妖精やドラゴンが登場する、夢のある話を否定するつもりはありません。わかりやすい例だと、不安や恐れにつけこむエセ科学がその一つです。一昔前に話題になった水素水。解説書を読むと、「水素が体内の活性酸素と結びついて水にしてくれるので、老化を防いでくれる」と書いてありました。でも、水素と酸素が科学反応して水ができるなら、それは爆発です。社会の刷り込みも「ファンタジー」の一種です。思考を麻痺させるような盲信は怖いもの。現代人の人生には選択肢が多いですが、日本で生きていると、個人が決めるべき幸せや生き方に、社会が介入してくるのを感じます。
水素水がいまだに信じられている証拠に、とあるフィットネスクラブで有料で水素水を販売するサービスなどが提供されているのが確認された。健康志向は高いが科学リテラシーにかける中高年の女性を中心にそのファンタジーは広まっていき今でも公然と売られているのだ。Amazonで「水素水」と検索すると生成機やなんかが販売されているが、中古のところに定価より高い値段がついたものが販売されていて誰も買わねーよとか思ったりすることがある。
アブダクション
「観察→ひらめき→仮説」の思考プロセスを、アブダクションと呼びます。モヤモヤと複雑な現実世界を観察し、解くべき問題を見出して、仮説を立てるときに使う推論です。ニュートンは、りんごが樹から落ちるのを見て万有引力が働くという仮説を立て、ローウェルは天文台から火星の表面を観察して運河があると仮説を立てました。第1章でも触れましたが、今のところ、コンピュータにはアブダクションの能力がないので、想像力という人間の専売特許は、ますます価値が高くなります。ただし、アブダクションは、ローウェルの仮説が間違っていたように、正しさを証明することができる推論ではありません。
仮説の正当性を証明するための論理展開が科学における重要な部分となる。
シンギュラリティが来るとか来ないとかが色々な人が語っている。AIが人間と相対する未来をを描き不安を煽る映画もあるが、日本ではドラえもんという人間と協調するロボットも描かれていたりする。AIの進化の先がドラえもんであって欲しいと切に願う。
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