「プロジェクトの進行には綿密なスケジューリングが重要だ」「チームワークを高め、生産性を高めるには同じような考え方をした人でチームを固めるべきだ」「講演は事前にしっかりと準備した原稿をそのまま話すべきだ」「新規事業は他社の動向を見定めながらしかるべきタイミングで行動に移すべきだ」私たちは必要以上に整然さを求めるあまり、適度なアクシデント、混沌、アドリブ、多様性を無視しているのではないでしょうか。本書ではエコノミストであるティム・ハーフォードが、アーティスト、政治指導者、経営者、研究者などを徹底的に取材し、「非合理でカオスなもの」がビジネスのさまざまな局面でいかにメリットがあるか、その重要性と活用法を紹介します。
なぜ、アクシデントや偶然は創造性の役に立つのか?
ビスコンティとボウイが従来の概念にとらわれない作曲手法を模索していると、イーノがスタジオに姿を現した。イーノは。自らが開発した「オブリーク・ストラテジーズ」と呼ばれる一〇〇枚ほどのカードを持参していた。それぞれのカードには。格言めいた指示が書いてあった。セッションが行きづまるたびに、イーノはランダムにカードを引き風変わりな指示を読み上げた。
- 誰もがしていることをしない最初の人になる
- 欠点を強調する
- 全体ではなく、部分であること
- 楽器の役割を変えてみる
- 物事の順番に注目する
- 背骨をねじる
こうして、オブリーク・ストラテジーズのカードが示す風変わりな指示に従って、製作はつづけられた。たとえば、アルバム『ロジャー』の録音中、世界屈指のギタリストと称されるカルロス・アロマーはドラムを演奏させられた。イーノが黒板に書いた和音をランダムに指示し、ミュージシャンがそれに従って演奏するといった方法がとられたこともある。
一見珍妙と思われるこの製作方法で1970年代の音楽シーンを彩った二枚のアルバム『ロウ』と『英雄夢語り』、そしてボウイも制作に加わったイギー・ポップの代表作『イディオット』と『ラスト・フォー・ライフ』が生まれた。この「オブリーク・ストラテジーズ」は音楽作成の現場だけでなくとも有効に活用できる現場はあるだろう。特にアイディアを出し合うような現場では思わぬ化学反応を呼ぶことも。偶然を適度に取り入れることは発想の転換にひと役買うのだ。例えば「Water」。このカードを目にしたらミュージシャンは何を思い浮かべるだろう。「休憩して飲み物でも飲もうか」「音が硬すぎるので、水のように流動的に」「演奏が湿っぽく、ウェットになりすぎているかも」このカードは、新たな視点で注意深く現在の状況を観察することを促すのだ。このようなカードに頼らなくても人は常日頃から予期せぬ刺激や制約に反応している。ただ人はそれを偶発的なものと意識していないだけだ。人との会話もしかり、意外性のある意見の交換、誰かとのコラボレーションは新鮮な視点が加わり普段とは違う緊張感からまた違ったものを生み出す。
デスク周りをきれいにさせたいという誘惑に抗う
MITのビルディング20やグーグルのオフィスは、「見た目がどのようなものであるかは関係ない」という、まったく異なる方針で管理されていた。ビルディング20の住人は、思い通りに職場に手を加えることができた。これは決して彼らの地位が高かったからではない。むしろ、通常は地位が高くなればなるほど、研究者は学内の由緒ある建物で高級なオフィスを洗えられるようになるので、勝手にオフィスを改造することなどできなくなる。地位が低い研究者ほど、さして重要ではないオフィスを割りあてられるので、そこを好きに使えた。
人はスペースを自分の好きなように使える時、最高のパフォーマンスを発揮する。オフィスを厳しく管理することが生産性を落とすなら、なぜ会社は熱心に職場を美しく保とうとするのか。管理職が心がけるべきは単純。部下がデスクが散らかっていても放っておくこと。きれいにしているか、散らかっているかは問題ではない。生産性を上げるのには社員が自由に空間を使えるということが大事なのだ。
整理整頓と生産性の関係
乱雑なデスクやオフィスの長所は、直前の作業の状態を示す手がかりが豊富にあることだ。こうした手がかりは、仕事を効果的に進めるのに役立つ。認知科学者のデヴィット・カーシュは、「几帳面タイプ」と「大雑把タイプ」の働き方を研究している。仕事上で何かすべきことが生じた場合、「几帳面タイプ」の人はそれを「やることリスト」やスケジュール表に書き込むことが多く、「大雑把タイプ」は物理的な手がかりを使う(机の上に、作成しなければならない報告書や、返信が必要な手紙、経理に提出すべき領収書などを置いたままにする)ことが多い。
大雑把タイプの人の乱雑に見える机は実は意味のある手がかりでいっぱいなのだ。逆に几帳面タイプの人は何かすべきことが見つかるとメモや手帳に書き込むなどしなければならない。
生活に乱雑さを取り入れること、混沌としたところにひらめきが生まれるというヒントを得られる書籍。何かアイディアに行き詰まったらこの書籍に書いてあったことを思い出そう。きっと違った視点でものを考える準備はもうできている。
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