「2人に1人は生涯に一度はがんに罹患する時代」、私たちは病の悩みとどう向き合い、何を選択し、QOL(生活の質)をどう高めていけばいいのか――。34歳のときに乳がんと診断され、現在はほぼ治癒した著者が、自らの体験をベースに、がん治療における落とし穴、いざというときのための「選択力」の身に付け方を示唆すると同時に、全国の名医の活動を紹介。そして、日々、変化するがん治療の現場を報告する。
がんに備える
遺伝子の話と関連しますが、よく「ウチは『がん家系』だから、自分もいつかきっとがんになる」と言っている人がいますが、実はこの「家系」というケースの多くは思い込みであることもわかってきています。例えば、子宮頸がんは100%、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因とされ、家系内に罹患者が何人いたとしても、それは遺伝によるものではありません。また、家系に肺がんが多いと言っても、喫煙や飲酒など、生活習慣や環境が親子兄弟姉妹で似ることが原因で罹患するケースもあり、これも遺伝とは関係ありません。実際、遺伝生のがんで発症するケースは、がん患者の数%ということです。
僕の親族もがんで亡くなった人が多いので遺伝を心配していた時期もあったが、多くの人ががんで亡くなる(がん以外で亡くなる人が減ってきた)昨今、罹患したらしたでしょうがないよねと思うようになった。僕は若い頃から喫煙と飲酒の習慣があったがそれも今ではやめている。それで肺がんや肝臓が悪くなったとしても、健康に配慮した生活を送ってきたのだから、それでも罹患した場合、諦めるしかないと思っている。
がん闘病の葛藤
雑誌のマネー特集を読んでいると、「ある程度の蓄えがあるなら、民間の医療保険には加入しないという選択肢もあり」などという、もっともらしい提案が書かれていることがあります。その理由としては、たとえ病気になったとしても、国の健康保険制度を利用すればそれで十分に賄えるという考え方ですが、これは病気になったことのない人の発想なのだろうと私は思います。がんとお金の関係は密接です。そして、がんが複雑であればあるほど、お金がかかることは事実です。仮に十分な蓄えがあったとしても、がんと診断されて将来がどうなるか読めない不安の中で、貯金を切り崩し続けながら治療を行うことなどできるでしょうか。こうした状況では、そもそも精神的に厳しくなると予想されます。また、健康保険が適用できるといっても、窓口負担は3割。高額療養費の適用になったとしても、それだけで必要な医療を賄うことができるでしょうか。結局、受けたい治療に巡り合っても、費用の問題でそれを見送った人を私は何人も見てきました。特にがん治療はオーダーメードといわれる時代に突入しているだけに、保険がきかない自由診療も多岐にわたります。がんになったらお金の心配をせずに、積極果敢な治療を選べる状況にあって初めて病気と向き合い、闘えるというものではないのでしょうか。
この本の著者も保険に助けられた人の一人。がん診断給付金、その後の入院給付金や手術給付金が続々と支払われ、総額1000万円近くを受け取ることができたので、お金の心配はしなくて済んだそうです。僕もがんではないのですが3ヵ月の入院を2回しています。症状が最悪だった状態で個室を選択できたのも差額ベット代を保険から支払うことができたから。病気の経験がほぼない人は、保険なんかかけ損だと言いますが、こればっかりはどんな状況で病気を発症するかわからない時代(ストレス社会なのでいつ鬱病やなんかを発症するかわかりません)なので、最低限の保険は必要だと考えます。
がん治療はどこまで進むのか
「例えば、これからはがんが見つかっても、いきなり手術を行ったり、抗がん剤治療しか選択肢がないと考えるのではなく、効果が予測できる遺伝子検査をまずは行い、本当に抗がん剤が必要か否かをまず見極めてから治療に入るという考え方が注目されています。乳がんというのは、手術では切除することができない、転移による微小な腫瘍が残っている可能性がある病です。そのため、手術を受けた後も、全身的な補助療法が重要になります。しかし、たとえ補助療法を受けなかったとしても、がんが再発しないケースもあります。このように考えると、補助療法を受けるのか受けないのか、その選択は悩ましいものであるといえます」
数年前にハリウッド女優が遺伝子検査で乳がんにかかる可能性が高いとわかり先手を打って、乳腺切除をしたことが話題となった。その後彼女は卵巣と卵管の切除を公表した。影響力のある人のこういった行為は僕たちの衝撃を与えた。
がん治療の方法は年を追うごとに精度を増し、今では治る病気の一つとして捉えられている。がんで死なないとなると平均寿命が100歳となる日も近い!?元気で100歳を迎えられるならいいが、体のどこかに支障をきたした状態で生き永らえるのは嫌だなと思った。
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