いま、何をテーマに、どのように書けば、人の心を動かす文章になるのか。小説からネットの文章まで、ノンフィクション作家でもある著者がテクニックを紹介。同時に、本書は電子メディア時代における「書く」ことの意味を考察したノンフィクションでもある。伝わる文章を書くことだけでなく、書くという行為そのものについて、思いを巡らすための一冊。
初めての小説
その日の絵日記は我ながら力作でした。ひと際目立つ巨大なビルに、ダイヤル式の黒電話が書かれた大きな看板。ひと目でその建物が電話の会社だと伝わる、わかりやすい絵です。文章の欄には「電電公社に行って楽しかった。帰りにデパートに寄った」と言う内容を書きました。
マンネリ化した日記に変化をつけるために書いた虚構の絵日記、もちろん電電公社の看板に黒電話が書かれているようなことはなく、大人には行ってないことがバレバレなのだが、子供のしたこと、そこは何も言わずに。この時著者はユニークな絵日記を書いて非常に満足していたと言う。後日、電電公社に行く機会があり愕然としたそうだ。この絵日記が著者の初めて書いた「小説」だった。もちろんそれ以前にも宿題の作文を書いたりはしていたが、自発的な創作ではなかった。なんとも可愛い処女作である。
誰かに向けて書く
関係者一〇人が出席する会議に向けて企画書をつくるとします。企画を通すため最低でも過半数の賛成が必要です。もちろん理想は全員から賛同を得ること。さて、企画を通すて目にはどのような企画書を書けばいいでしょうか。一〇人の顔をそれぞれ思い浮かべて、誰からも文句が出ないように書きますか。それはあまりおすすめできません。誰からも文句が出ない文章は、誰からも賛同が得られない文章だと思ったほうがいい。仮に書けたとしても、おそらく中身の薄い文章になって、過半数の賛成も得られないでしょう。説得力のある文章を書くためには、誰に向けて書くのか、つまり読み手が複数いる場合は、全員ではなく特定の一人に絞ること。できるだけ具体的に読み手の顔を思い浮かべたほうが、当たり障りのない内容から一歩踏み込んだ表現ができて、文章の説得力も高まります。
よくWebライティングの書籍などを読んでいると、ペルソナ設定をしっかりしようと言うことが書いてある。それと同じで文章を書くときは誰に、どんな人に読んでもらうかを意識して書くと良いのだと言う。万人ウケを狙うと面白くない文章になりがち。多少尖っていても、読んでくれる人を意識しながら書くと読み手に伝わりやすいと言うことか。僕はもともと文章を書くのが苦手。そんな意識があるからこそ本書を手に取ったのだが、「私には文才がある」「俺ほど文章が上手い奴は社内にはいない」と思っている人よりは、上手に書くことの第一歩を踏み出していると言うエールが冒頭に記されていて、少し頑張ろうと言う気になった。
汎用性が高い形容詞の罠
お互いに争わずに、いいたいことをいうにはどうすればいいのか。そこで多用されるのが形容詞。特に頻繁に使われるのが、「かわいい」「すごい」といったあいまいで、汎用性が高い形容詞です。争うことを極端に怖がる心理は気になるところです。ただ、本書の目的は社会的傾向を分析することではありません。ここで強調したいのは、自己主張を避け、あいまいさのなかに逃げこむようにして形容詞を使っている限り、表現力を磨くことはできないだろうということです。
僕の学生時代も訳のわからない言葉を形容詞がわりに使っていた時期がある。「ボンゲ」とか「変態だ」とか。使い方としては「ちょーボンゲ!」とか「〇〇さんそれは変態だ」とか仲間内だけでしか通用しない言葉を使う時期が若い頃にはよくあることだ。汎用性が高く何にでもこの言葉を使ったもんだ。ボキャブラリーが多い事ばかりが正義ではないが、こういった汎用性の高い言葉ばかりつかっていては表現力を磨くことはできない。
話を脱線させるのは内容に自信がないから
邪魔になるだけなのに、書き手はどうして話を脱線させるのか。少々厳しい言い方をすれば、それは内容の展開に自信がないからかもしれません。中身が薄いから、サイドストーリーを付け加えてなんとか中身を厚く見せようとしたり、構成が練れていないケースも少なくないようです。しかし、こうした安易なやり方をしていてはいつまでたっても文章は上手くなりません。その点からもむやみな脱線は慎むほうがいい。
これは僕にとって痛い言葉だ。本の感想を書いているはずが自分の事にすり替わりがち。読者の僕がどんな人物かどうかなんてどうでも良い事なのだろうが、ついつい自分のことを書いてしまう。自分のことだとスラスラ文章が浮かぶ(当たり前だが)から一日に決められた分量の文章を書こうとするときノルマを達成しやすい。
他にもランナーズハイならぬライターズハイが訪れる条件についてや、執筆作業中のBGMについてなど、興味深い記述がたくさんありました。コピペ時代のリユースやリサイクル、キュレーションなどについても触れています。あなたの文章のレベルアップの一助となる書籍です。
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