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路|吉田 修一

ホテル前で渡された彼の電話番号、瞬間的に自分の連絡先も渡すとするが彼は「電話、待っている」と一言だけ残す。それはまるで「信じている」と言ってすかの如く。結局自分の連絡先は渡さなかった。商社マン、老人、建築家や車両工場員。台湾新幹線をめぐる人々の絆を描いた長編。

 

2000年 逆転

台湾の高速鉄道鉄道の敷設における入札で勝利し日本の新幹線が台湾に採用されることに。

そこから生まれる人間ドラマ。

受注の瞬間を切り取る場面ではその様子がリアルに描かれており、このような大きな仕事をしたことがない人間にもその場の臨場感を味あわせてくれる。

他愛の無い会話の中に「部長の奥様ってセンスがいいですね」という女性のセリフがある。

実際はそのネクタイは部長自ら選んだものだったのだが、旦那のネクタイを奥さんが選ぶなどというちょっと時代を感じるやりとりも、当時を振り返るのに一役かっている。

今時は男性もファッションに対する意識も高くなっており、奥さんがネクタイを選ぶなんていうのはちょっと時代錯誤。

そこをうまく表現して当時の様子を振り返るのにより一層のリアル感を演出している。

 

2003年 レール

オフィスビルの一階にはスターバックスがある。

その辺の描写も台湾を訪れたことがない僕のような人間にも都市をイメージさせる。

日本ならこんな都市という大体の都市像を描きやすい。

そんな台湾の中心部で高速鉄道敷設の仕事は着々と進むのであった。

 

2005年 試運転

何とか試運転までこぎつけ、目標の速度300キロ目指してテストが始まる。

速度を表示するデジタルパネルの描写は日本でリニア新幹線のテスト走行を思わせるもの。

着実に速度を上げていくデジタルパネルの速度は300キロを超えそれが安定した。

歓喜の嘆息がもれる。

あちらこちらからそれぞれの言葉でお互いの仕事をたたえ合う声が。

 

2006年 開通式典

当初2005年開通を目指していたがそれが延期となった。

開業予定は2005年。

これに騙されたと当時を振り返る。

仕事をする上で単身赴任などの人事はついて回るもの。

働く地域を選べるのは当時ではまだ稀だったのだろう。

現在は働き方改革などという政府の方針もあり、そのような社員の意向を無視した人事はあまりない。

もちろん、中には断りきれない事情で単身赴任等を強いられる場面は多々あるが。

 

高速鉄道敷設に伴う一連のプロジェクトの中で繰り広げられる人間ドラマ。終盤に出てくる懐かしい人との再会などがより一層物語をリアルにしてくれる。巨大プロジェクトの一歯車が輝く作品。

 

 

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