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『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』生き残るのは閉じた帝国

      2017/10/02

世界の潮流は「これからの企業はグローバルに活動しなくては、競争に負ける」「世界全体を豊かにするにはグローバリゼーションしか方法はない」といった具合。政治の分野でも「グローバリゼーションによって、あらゆる国で民主化が進む」と肯定的な文脈でしばしば使われている。しかし、ここにきてグローバリズムの背を向けるような動きも広まっってきています。いったいなぜでしょうか?

「国民国家」へのゆり戻し

グローバル資本に振り回されるのはたくさんだ、世界に対して自分たちの社会や市場を「閉じる」方向に向かおうという意識が国民の間に広まってきた。これは、いわば自国の社会や市場を自分たち国民の手に取り戻すのだという、国民国家へのゆり戻しです。こうした各国の国民の声が、大きな潮流となって現れたのがイギリスのEU離脱の国民投票であり、「アメリカ・ファースト」を唱え、悪くすれば排外主義に傾くトランプ大統領の誕生でした。

まず自国民の利益を先に考える自国民ファーストの国家を求める声がトランプを大統領の椅子に座らせたわけだ。先進国の国民からも収奪して、利益を確保しようとするグローバル資本に対してうんざりしているのは先進各国の共通の現象だと言えよう。利潤を追求しようとするグローバル資本に対しては一定数のアンチがいて、不買運動やなんかを訴えるツイートなんかも目立つようになっている気がする。試しに「スタバ」とツイッターの検索窓に入力して検索をかけると好意的なツイートに加えて、レッテルを貼った批判的なツイートがガンガン流れてくるのがわかる。

IT革命は19世紀の動力革命の延長線上にある

動力革命以前の一三世紀の「東方貿易」にまでさかのぼります。東方貿易をおこなった商人たちは、一〇八八年にイタリアのボローニャ大学を設立するなどして、地中海世界以外の情報を積極的に取り入れようとしました。つまり、「蒸気」が結合であるように、未知なる土地への知識欲がヨーロッパとインドを「結合」させたのです。続いて、一五世紀末の「印刷革命」が「地中海世界」を北部ヨーロッパと「結合」させ、一九世紀の「動力革命」がヨーロッパ大陸と「新大陸」である南北アメリカを結合させ、ついに二〇世紀末のIT革命では全地球を覆いつくしました。印刷も、動力も、ITもすべて「より遠く、より速く」の一直線上にある技術なのです。

現在では海外のショッピングサイトで物を買っても一週間も待たないで商品を手にすることができる。便利な世の中になったものだが、こうした消費者の「便利」の裏側では人知れず苦労している企業や労働者がいる。僕の場合、書籍をAmazonで1ヵ月に1回まとめて注文するが、発売日がずれていたりすると荷物は何個かに分かれて配送されることに。宅配ボックスがあるので不在でも再配達とはならないが(ほとんど家にいるのだがww)。1日に2回に分けて配送される日もある。ちょっと前にヤマト運輸の再配達や時間指定配達の労働環境問題が報道された時期があったが、ヤマトが撤退したら困るのはAmazon、プライム会員の年額を少しアップしてでも繋ぎ止めておきたい。Amazonは当日配送をやめる気はなく、独自の配送網を構築しようとヤマト以外の中小運送会社を囲い込もうとしているが果たしてうまくいくのだろうか。

コンビニなどでも同様の問題が起きており、もはや飽和状態という中で新たな店舗をオープンすると客の奪い合いとなり、利潤はほとんどない状態に。店員は最低賃金で様々な業務を一人で行わなくてはならないこともあり、オーナーが別にいるコンビニで正社員として店長を任されると過酷な労働とそれに見合わない低賃金での苦役が待っている。

「成長至上主義」の限界

成長至上主義にしがみつこうとすればするほど、政治的にも経済的にもリスクは高まり、社会の秩序は崩壊に向かいます。成長は近代の産物です。つまり、近代システムが磐石であること、すなわち空間が無限であることが成功の条件なのです。フロンティアの消滅した現代では、もはや空間は有限です。資本主義と国民国家が両立できた一九七〇年半ばまでの「黄金時代」を新しい時代のモデルとすることはできません。そもそも第二次世界大戦後の「黄金時代」も近代の理念の果実ではなく、冷戦の産物だったのです。

こうした過去の社会体制が輝きを見せたの時期が、資本主義の「黄金時代」で、こうしたシステムが終わっていく次の時代にどのようなモデルが有効なのか?生き残るのは閉じた国だと著者は言います。地球規模で見てみると、経済圏が閉じないまま、グローバリゼーションがさらに進化し、一部の富裕層が富を収奪すればするほど、経済どころか、安全や秩序が脅かされることに。これを防ぐには経済圏を「閉じる」方向に舵をきらなくてはならないという。

フロンティアが消滅した現代は、無限の空間という前提条件が崩れているのだから、近代システムはもう通用しない。低成長(あるいは無成長)でも持続可能な新たなシステムの構築が急務であると感じた。

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