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格差放置社会ニッポンの末路。日本を覆う「怯え」の正体とは?

      2017/11/29

「パラサイト・シングル」の発見から20年、「婚活」ブームから10年「家族形成格差」の拡大が社会を引き裂く。〝アリ地獄〟から抜け出すにはどうすればいいか?日本を覆う「怯え」の正体。今の日本で繰り広げられているのは「下流に転落しないための競争」である。アラフォーになったパラサイト・シングルの実情を通し、格差社会の過酷な現実を明らかにする。

労働状況の変化と下流化

私の定義では、下流とは「最低限の生活はできるけれども、いまよりも裕福になること(上昇移動=中流になること)が期待できない状態」のことです。日本では、たとえばフリーターであっても親と同居していれば、将来に希望は持てなくても、とりあえず生活を楽しむくらいのことはできるわけです。また、生活保護という制度としては優れたものがあるので、食べ物に困ることもめったに起こりません。しかし、「将来」ゆとりのある中流生活ができるという見通しを描くことはできない。そんな状況です。それが当時の若者の状況だったと思います。

同じ底辺でもアメリカと比べると日本は随分マシだ。最低限の生活もできないほどの貧困化・下層化には至らないのだから。底辺への競争は中流生活を維持するための競争です。正確に言えば底辺に落ちないための競争。そこそこの生活ができて人生楽しければいい。いわば、上昇志向のない若者たちの増加を見て、下流社会と呼ぶ。パラサイト・シングルなんかもこの部類に属す。自分の親たちが当たり前のように築き上げてきたものの上で「中流生活」を営みそれを維持したいがための、逃げ切り競争を「底辺への競争」と位置付けている。

標準的なライフコース

たとえば、学校卒業時に正社員になれなかった人は、その後の就職活動で新卒よりも非常に厳しい状況にさらされます。新卒でブラック企業に入ってしまって辞めざるを得なかったような人が転職する場合でも、よりよい条件の正社員の職にはなかなか就けません。女性の場合は、結婚や子育てのために正社員(公務員も含む)をいったん辞めてしまった人は、その後パート職になるなど、正社員に戻ることが非常に困難です。だからこそ、就活や婚活、保活(保育活動)といった「内側」に入る競争、つまり、標準的なライフコースにとどまるための競争が激しくなってしまうのです。

学生の場合、父親と同等の正社員となり、働き続けることで、今のさえいかつ水準を守れる方向の努力をする。そこに上昇志向はありません。もし、日本がもっとやり直しがきく社会ならばこうした後ろ向きな競争が激しくなることはないでしょう。婚活も同じで、女性なら将来、父親と同レベルぐらい稼ぎそうな安定した収入の正社員の男性を捕まえようと躍起になる。そうでないと自分が見てきた母親と同じレベルの生活ができないことになる。最近では婚活が若年化しつつあるのも底辺への競争のあらわれだ。

底辺への競争の先頭を走るアラフォー世代

戦前までの日本の社会は、一部の富裕層と大多数の庶民という形で階層が分かれていて、階層移動の機会は、ほとんどありませんでした。まれに富裕層から庶民に転落したり、庶民から富裕層に上昇したりという階層移動があったものの、例外といってよいものでした。つまり戦前までは、親が富裕層なら子も孫も富裕層、親が庶民なら子も孫も庶民であるといったような、いってみれば、流動性が乏しく安定した社会だったのです。それは、経済発展があまりなく、職業は世襲で、子どもは親と同じ職業に就いていたわけです。それぞれが分相応に生活をしていて、その意味では、各階層の内側においては世代間にも世代内にも大きな質的な格差がなかったわけです。

僕のように、20年前、20歳前後だったアラフォー世代の中には、パラサイト・シングルとなり下流化の兆候は見えつつも、中流の生活を謳歌した人も多いだろう。しかし、20年経ち、中年になって、正社員になれなかったり、結婚したくてもできなかったり、親と死別したりとかなりの数の人間が下流に転落しつつあります。アラフォー世代は今まさに底辺への競争の最前線に立たされているのだ。

孤立無業(SNEP)

東京大学社会科学研究助教授で経済学者の玄田有史さんが書いた『孤立無業(SNEP)』(2013年、日本経済新聞出版社)によると、「親以外と話さない」という40歳前後の男女が増えています。玄田さんは20歳以上59歳 以下の未婚無業者について調べ、「働いてもいない、コミュニケーションもない人」を「SNEP」と名付けましたが、同書からはまさに社会から孤立している中年パラサイト・シングルの姿が見えてきます。

僕はまさにこのSNEPだ。これから先、人生のパートナーもいなければ、子供もいない。この状況は親が死んだ後、寂しさがこたえるだろうなと予想がつく。生活レベルを落として職に就き仕事のストレスや病気と戦いながら貯金をしてパートナーを得るという選択肢もあるのだろうがそれも難しい。

アラフォー世代が抱える社会の病巣がうかがえる書籍。挫折した人がなかなかやり直せない世の中がよくわかる。そうならないために戦い続ける全ての人たちへ。

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