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『エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する』

      2018/12/08

『チャヴ 弱者を敵視する社会』著者オーウェン・ジョーンズ待望の第二弾!イギリスでは30万部超、各国で翻訳刊行され熱狂的支持を集める世界的ベストセラー
国に「たかって」いるのは、本当は、誰か?新自由主義・緊縮財政のもと、国民を騙し、困窮させ、分断しその一方で、臆面もなく自らの栄華を誇る人々のリアルな姿
イギリスと同じ不正義は、いま日本でも起きている

エスタブリッシュメントとは?

いずれにしても、フェアリーのコラムは、「エスタブリッシュメントとは、互いに交流し、面倒を見合い、必要があれば助け合う権力者のネットワーク」であり、「イギリスは国民によって統治されているのではない」ことを明確にした(民主主義では、国民による統治が「あるべき姿」とされる)。彼のこの考えは、有力な左派の思想家が抱いてきた見解を反映したものだった。

このエスタブリッシュメントの定義には、イギリスの権力者の重要な側面が欠けている。ひとつは、大企業や金融のエリート、政界エリートを緊密に結びつける共通の経済的利益に触れていないこと。そしてもうひとつは、エスタブリッシュメントをひとつにまとめている共通のメンタリティも論じていなかった。そこからもわかるように、イギリスのエスタブリッシュメントのあり方は固定されていない。社会の上層部は常に流動的なのだ。

NHSの民営化にみる支配層の知的素材

NHSの民営化がまさにそれだった。マーガレット・サッチャーでさえ、あえてそこまで踏み込まなかったのに、キャメロン連立政府は民営化を現実にすることができた。「彼らが何か言ったことに対して、政治家は答える。『いや、それはやらないつもりだ、極端すぎるから。でも、ほんの少しならできるかもしれない』と」もちろん、この思想的勝利をもたらしたのは先兵だけではない。だが、彼らが重要な役割を果たしたのは確かだ。急進的な右寄りの見解の知的土台を作り、大衆に広めたのは彼らである。その偏った政策提言は、導入されればしばしば支持者の直接の利益になるにかかわらず、ジャーナリストには、客観的で公平な提言として取り上げられることが多い。

先兵たちは、協力先の国の支配層にとってもビジネス、政治、メディアの世界を繋げる役割を果たすため、宝の山だ。彼らはイギリスの支配層の一角をなすだけでなく、現在のイギリスの形にするのを手伝い、企業や裕福な支援者に、自らの投資が政界だったことを証明してみせた。そして、裕福な支援者は権力と富を得て、新自由主義のイギリスで繁栄を続けたのだ。

納税者の金を使う

わが国の下院議員は、企業人のような政治家になっている。自分たちが支援してきた大富豪エリートをうらやみ、みずから実施した政策の分け前にあずかれないことに苛立っている。彼らはもはや自分たちの仕事を天職や義務や奉仕とは考えておらず、たんに上位中流階級のキャリアの選択肢のひとつと見なし、しかもその仕事は、同等のほかの仕事と比べてあまり報われていないと思っている。

確かに金を稼ぎたければ起業して一発当てた方が、議員をやるよりよっぽどいい収入を得られる。政治家にはそんなお金には変えられない働く意義を持ってほしいものだが、いざ議員になったら企業人と同じく自分たちの分け前が少ないことに苛立つわけだ。納税者の金から給料をもらっているのだから仕方がない。もし自分たちの収入を多くしたいのであれば大富豪にペコペコせず彼らから搾取することになる累進課税の強化などの法案を打ち出せばよい。少なくともその方が多くの国民からの支持は得られると思うのだが。

そして、国民は誰も信じなくなった

現在の政治秩序に闘いをしかける敵らしい敵はほとんどいない。だが一方で、政治家に対する信頼は哀れなほど低い。<イプソス・モリ>の世論調査によると、五〇パーセントを超えるイギリス人が、下院議員は自分の利益を最優先すると思っている。七二パーセントは、政治家が真実を話すとは思っていない。六五パーセントは、少なくとも半数の下院議員が私的利益のために権力を用いていると考えている。

この政治家に対する信頼度の低さはなんなのか。日本でも同じようなことが起こっているように思う。選挙の投票率を見ても、政治の力ではどうにもならないと選挙にすら行かず現状に甘んじているだけの人が圧倒的に多いのだ。選挙はすべての国民に与えられた権利なので、きちんと行使していきましょう。政治家が信じられないなら、自分が一票対抗馬の立候補者に入れることで国民の義務を果たすことができます。

富と権力を手にするエスタブリッシュメントに属する人たち。国の制度や法律に乗っかって勢力を強める彼らを止めるには、不正や私的利益供与を許さない下々の声が必要。イギリス社会にはびこる不平等と理不尽を暴き、富裕層による富裕層のための政治、経済、メディアを糾弾する書籍。合法なら何をしてもいいわけではないと声を大にして言いたい。

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