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穀物取引から読み取れる、食生活、農業、経済とは?

      2018/08/07

“トウモロコシ”が世界を動かす――穀物取引の現場を歩いた第一線穀物アナリストが読む、食生活、農業、経済。穀物市場を知れば、経済の見方が変わる。人類の普遍的なテーマである食糧問題にも直結する穀物市場から見える、人間の食生活、農業、経済を、スペシャリストが語る。

穀物取引の現場を歩いて

世界の穀物の需要供給の流れを大きく変えたものに東西冷戦の雪解けがある。キューバ危機やトンキン湾事件、そしてベトナム北爆などいくたびかの六〇年代の危機を乗り越えて、米中国交回復など東西冷戦の雪解けの 兆しが少し見えてきた七〇年代の前半、アメリカがソ連向けに穀物を売るようになった。それまでは仮想敵国であり、アメリカがソ連に穀物を輸出することは基本的には考えられなかった。この変化をいち早く察知してその後暗躍していったのが、当時のコンチネンタル社やカーギル社などのグレーンメジャーだった。グレーンメジャーは宇宙衛星を使っての気象情報を盛んに利用していた。NASAの宇宙衛星から送られてくる映像を見て、ソ連が凶作になり、食糧不足に陥って大変なことになることを予見していた。最初に口火を切ったのがコンチネンタル社であり、追いかけるようにカーギルが、それぞれ大量成約に結びつけて、世界を驚かせたのである。それまでも、世界の穀倉地帯であり、世界のパン籠といわれていたアメリカから穀物が世界中に流れていた。ソ連、そして中国という大きな閉ざされていたマーケットが解禁されたことで、流れる先が大きく変わった。これが穀物需給を大きく変化させた。

海外では日本の大学と違って、農業経済学などアカデミックなことを教わるのではなく、カレッジやユニバーシティでは実践的で専門的なことを学んでいる。穀物等の取引所での実際の取引や価格の決定要因について徹底的に学び、卒業後カーギル社とかコンチネンタル社などに入社し3ヵ月ほどのトレーニングの後穀物取引のトレーダーとして働き、その後マネージャーとなるケースが多いそうだ。

穀物市場を読む

トウモロコシから作るクリーンエネルギー原料としてのエタノール需要をとりあげて説明したい。エタノール需要は着実に増えている。したがってエタノール生産のためのトウモロコシ消費量も着実に増えている。一般的にはこれは強材料ととらえられる。しかし、だからといって買いに入るという人はほとんどいない。理由はそれが確かに長期的には強材料ではあるが、すでに周知の事実であるからである。みんなが知っていることに対しては、相場というのは反応が非常に弱い。反応が弱いというより、もっと積極的に表現すれば反応しないのである。このエタノール需要はトウモロコシの需給関係の土台を着実に築き上げているのは事実である。しかし農業経済学者やエタノール協会などその燃料消費者が今後の需要の伸びをいくら強調しても、市場はすでにわかっていることには反応しない特徴を持っている。価格の形成要因はあくまでも需要と供給の関係が今後どうなるかという新しい見通しである。では反応する需要サイドの材料とはどんなものなのか。例えば、WTOに加盟した中国が低率による輸入関税割当を発表したが、これは瞬間的な強材料として反応が大きい。発給を割当てられた企業がトウモロコシまたは小麦を買いに入るという思惑が走る。いわば思惑で相場というのは展開する。そしてそれが時間の経過で過去の事実となって、みんなが知っていることになる。すると逆に中国が買いに出動しなかった場合、今度は失望というかたちになって、売りの材料となる。それが相場である。

通貨や穀物取引から株取引まであらゆる取引では、皆が知っている事実では相場は動かない、何かいつもと違った不安感や、高揚感の裏に潜んでいる計り知れない思惑が相場をけん引する。景気に対する漠然とした不安やなんかがそれだ。一般市民が得られる情報程度で相場に挑むと大抵返り討ちにあう。それが相場にすでに織り込み済みというやつだ。

穀物市場から見た世界経済

現在は米だけはある程度一〇〇%に近い形に自給率は保たれているが、米以外の食用の麦類や大豆、トウモロコシ、とくにトウモロコシを中心とした飼料用穀物、搾油用の大豆はほとんど海外からの輸入である。これは畜産の成長を支えるだけの飼料用穀物を生産する耕地面積が、日本国土の限界を超えていることによる。現在日本が輸入している農産物の生産に必要な海外の農地面積は、国内の農地面積の二・五倍に相当するというデータがある。現在日本国内に四八三万へクタールの農地があるが、もしも日本で生産するとなれば、あらたに一二〇〇万ヘクタールが必要である。日本の場合には農地といっても山間部で無理して畑や田んぼにしているところもあり、アメリカのように、どこまでいっても平原というわけではない。また、もしも日本国内で生産したとしても、ソロバン勘定は圧倒的に差が出てしまう。せいぜい日本は焼きトウモロコシを食べる程度のものならばメイド・イン・ジャパンのトウモロコシでも量的にも採算的にも合うが、家畜の飼料用に北海道産トウモロコシをそのまま使用することは、すでに間に合わない。日本の畜産に必要な飼料穀物のボリュームはそれほどに大きくなっている。

つい最近も輸入小麦の値段が高騰しているため製粉会社が次々と値上げの発表に踏み買ったという報道があった。製パン会社もそれに続き値上げに踏み切る模様。小麦は輸入に頼っている現状では輸入価格の上昇は家計にまで及ぶことも。

トウモロコシの取引に携わっていた著者の穀物取引から学べる経済学の本。なぜ私たちの食卓に上がる様々な食材は値上がりするのかがわかるわかりやすい本です。

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