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報道などでも実態がイマイチ見えてこない「官僚」の真実

      2017/10/06

警視庁に記者クラブがあるように、財務省にも記者クラブがある。著者は、財務省にいた時にマスコミ対策を担当していた。ニュースがあるときは、マスコミ用にまとめた資料のコピーを持って行き、必要に応じてその後、「レク」をしていた。レクというのはレクチャーのことで、単に資料の解説をするだけである。するとその日のニュースや翌日の新聞は、資料の内容をそのまま鵜呑みにした報道をしてくれるのである。官僚とはどういったものかを内側から紐解く書籍である。

官僚システムの「弊害」を垣間見せた森友学園問題

実は、森友学園問題は日本の官僚システムの「弊害」を垣間見せた一件でもあるのだ。そもそも森友学園問題とは、大阪市の学校法人「森友学園」が、大阪府豊中市の国有地を小学校の用地として土地評価額より大幅に安い価格で取得した問題のことだ。問題発生当初は、評価額より大幅に安く購入できたのは政治家が口利きをしたためではないか、という疑惑が持たれていた。しかし国有地の買い手である森友学園と、その売り主である財務省の外局で或る近畿財務局との交渉過程に、政治家の関与こそ認められたものの、森友学園ー政治家ー近畿財務局の三者間において金銭及び金品の授受はなかったとみられ、刑法に定められた犯罪である「贈収賄」は成立しない公算が高くなった。

その後、ご存知の通り、安倍晋三首相の夫人である安倍昭恵氏が森友学園の名誉校長を勤めていたこともあり、矛先は政治家ではなく、昭恵夫人の影響があったのではないかというものに変遷していく。流行語にもなりそうなぐらい頻繁に使われるようになった「忖度」。ニュースやワイドショーでは紋切り型に「いっこうに疑惑が究明されていない。関係証人喚問を徹底的にやるべきだ」と言った趣旨の発言をしたり顔のコメンテーターたちが語る。

なぜこんなにも土地の値引きがされたのかを別の視点でみていくと、そこには官僚の影が。近畿財務局は森友学園と契約する前に、大阪音楽大学と国有地の残り8770平方メートルに関して売買交渉を進めていた。2012年大阪音楽大学は7億円での購入を持ちかけるが、近畿財務局は9億円を提示。大阪音楽大学は購入を断念した。その後、森友学園へと交渉相手は変わっていくわけだが、8億円の値引きは人為的に作られたものだという。

まともに地下のゴミを処理する費用を弾き出すと、10億円を超える可能性すらあった。8億円の値引きが正当なものだとするわけではないが、本来であれば、近畿財務局は処理費用が10億円を超えたとしてもきちんと、地中のゴミを処理してからキレイな更地を入札にかけるべきだった。または、地中にゴミが埋まっていることを明示した上で入札を行うという選択肢も。要は正規の手続きを踏まずに国有地の売却を進めた官僚側にも責任の一端があると言える。そのことにはワイドショーなどでは触れられることはなく、現在のなんとなく問題が消滅していくような流れにつながっている。

家計学園問題〜学ばないマスコミと野党〜

筆者が、家計学園問題でこれまで述べてきたことは、いずれも単純なことだ。しかし、相変わらずマスコミは全く真相にたどり着いていない。その理由は目の前の現象だけしかみていないからだ。一方の当事者だけから示された「文書」や「会見発言」を、金科玉条のように受け取ってしまっているから、家計学園問題には「総理の意向」が働いていると思い込んでいる。

家計学園の一校のみの認可はよくよく考えてみればおかしなことではない。規制緩和に反対する獣医師会も、新設に反対するだけではもう収まりがつかないということで、一校だけならと妥協した。この一校に家計学園が「総理の意向」によって選ばれたと疑う報道がほとんどだったが、一校容認という決定ののち、ウェイティングリストの一番上に載っていた家計学園が選ばれたと考えればなんの不思議もない。家計学園は小泉政権時代から認可を求めており妥当であると考える人がいてもおかしくないのに。

この構図は森友問題と同じである。ゴミの存在を知らせず売却交渉を進めた近畿財務局の担当者のミスで国有地が安く買えただけなのに、政治家の関与を匂わせる籠池氏と、規制緩和の戦いに敗れただけなのに、安倍政権の関与をちらつかせる前川氏は、完全にダブっている。森友学園問題が不発に終わった教訓を野党やマスコミは何も学んでいない。

官僚の一番の強み

法律は政治家がつくっているはずーー。そう思い込んでいる人が多いかもしれない。たしかに、中学校の公民の授業では「三権分立」を習う。三権分立は国家の権力を1か所に集中させない仕組みで、日本は、立法権を国会に、行政権を内閣、司法権を裁判所にそれぞれ受け持たせている。このうち立法権は、文字通り、法律を成立させるための権限のことだ。実際に、日本の国会は、選挙で選ばれた議員の多数決によって、法律を成立させるかどうかを決定する。

しかしこの法律、国会に提出される法律は2種類あり、そのうちの一つである政府提出法案を書いているのは官僚なのだ。しかももう一方の、議員提出法案でも官僚が関わっている場合がある。法律の条文をかける人間は、文章作成能力に長けた官僚しかいないからだ。弁護士や裁判官など法を施行する人間でもこの法律を作るといったスキルは持ち合わせていない。

天下りなども問題視される官僚だが、その背景には50代前半、40代後半で肩たたきにあい退官するという生存競争がある。キャリアの受け皿となっているのを考えれば、許されてもいいのではとすら思うが、高給の職に付いていることを考えると庶民感覚からは外れているとしか言いようがない。一冊の本を通して官僚の真の姿が見える面白い書籍でした。

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