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農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦|川内イオ|いま、日本の農業の常識が覆る

最先端技術と最新のマネジメントで、今、日本の農業の常識が覆る。衰退産業とされてきた農業に新風を巻き起こし、独自のアイデアで高品質な商品、サービスを生み出す変革者たち。明日のビジネスヒントがここに!!

客足が絶えない梨園

2018年8月某日、栃木県宇都宮市の郊外。僕は、当地で3代続く「阿部梨園」の事務所で「畑に入らないマネージャー」、佐川友彦の話を聞いていた。クーラーの効いた事務所のすぐ外では、採れたばかりの梨が売られている。その日は平日で、何の変哲もない蒸し暑い夏の午後だったが、ひっきりなしに車が入ってきては梨を買っていく。阿部梨園の周りには田畑しかなく、なにかのついでに立ち寄るような場所ではない。みんな、阿部梨園を目的地に車を運転してきているのだ。 「平日なのに、たくさんお客さんがくるんですね」と言うと、佐川は頷いた。 「まだシーズンが始まったばかりで、ほとんど告知もしていないんですけどね」

売り場では、若いスタッフがお客さんに対応していた。お客さんが台の上に置かれた梨を選び、現金を手渡す。一見、昔ながらの風景のなかに、ひとつ明らかに異なる点がある。

スタッフがタブレット端末を軽快に操りながら、売り上げを管理しているのだ。しかも、とびっきりの笑顔を浮かべながら。僕はその姿を見て、なんだか嬉しくなった。高齢化、後継者不足で暗雲垂れ込めていると思われがちな農業のなかで、生産者が目指すべきひとつの未来を目の当たりにした気がしたからだ。大げさに思われるかもしれないが、佐川の取り組みとそれがもたらした結果を見れば、僕の言いたいこともわかってもらえるだろう。

2014年、阿部梨園に加わった佐川は経営と業務の「カイゼン」を担ってきた。ユニークなのは「カイゼン」の提案とマネジメントに特化してきたことだ。大小さまざまなカイゼンの数は、なんと500を超える。タブレット端末の導入も、そのひとつだ。佐川の加入以来、阿部梨園の直売率は約 80%から 99%まで伸びた。農協に納める通常のルートと比べて直売は圧倒的に利益率が高く、売り上げも伸長。もともと2・6ヘクタールある梨園の拡大を進めている……と書くと、佐川がなにか特別な手を打ったように感じるかもしれないが、そうではない。

佐川がもたらしたカイゼンは、どこの農家でも取りいれられるものが多い。むしろ、ひとつひとつはシンプルかつ小さなカイゼンの積み重ねによって無駄が削ぎ落とされ、業務の合理化が進み、経営が骨太になった成果としての直売率99%と言える。現代にあっても、手書きやFAXによる注文や販売の受付、アバウトな生産管理にどんぶり勘定という農家は少なくない。見方を変えると、日本の農家はまだまだカイゼンの余地が大きいということだ。

しっかりマネジメントができている農家は強い。どんぶり勘定で農場経営とは呼び難い経営をいまだにしているところは多い。美味しい農産物を作ることには長けているのにそれを売るノウハウが欠如しているのだ。次世代の農家はそこに着目きちんとマネジメント。こうした農家は売上や経費、賃金などのバランスをきちんと取り利益を出していく。経営の力とITで農家を守るそれが次世代の農家。

「シングルオリジン」の先駆者

ここで築地親子、その甥で後を継いだ佳輝の話を続ける前に、あまり知られていない日本茶の世界について触れよう。勝美さんが「ナンバーワンにして、オンリーワン」のお茶づくりに賭けた背景がわかる。

まず、日本で栽培されているお茶の品種について。なんと 75%は「やぶきた」という品種である。普段なにげなく飲まれているお茶のほとんどが、やぶきたなのだ。なぜひとつの品種がここまでシェアを占めているかと言えば、高品質で育てやすいから。

そして、一般的に売られている茶葉は売り物になる過程で均一品質、大量生産、安価提供を実現するために、軒並み「ブレンド」されている。要するに、スーパーやお茶屋さんで棚に並んでいる「〇〇茶」という商品は、たくさんの生産者から集めた茶葉を混ぜ合わせて作られているのだ。もちろん、ペットボトルのお茶も同様である。世の中にはたくさんの日本茶が売られているけど、シンプルに言えばほぼやぶきたのブレンド茶になる。

この話を聞いた時、「なるほど!」と納得した。僕は日本茶が好きで、いろいろな産地の茶葉を買って飲んできたが、例えばワインのようにハッキリとした差異は感じられなかった。その理由が、「 75%を占めるやぶきた」と、「ブレンド」にあったのだ。

このシステムは、お茶の消費量が右肩上がりだった時代に最適化された。全国茶生産団体連合会などの資料によれば、日本茶(緑茶) の消費量はペットボトルの緑茶の需要もあって昭和の時代から伸びており、2004年には 11 万6823トンを記録している。この量の日本茶を生産するためには、とにかく大量の茶葉が必要だったのだろう。

その流れに逆らうように、少量生産で高品質のお茶をつくり続けてきたのが、築地郁美さん、勝美さんの親子だった。前出の原料茶メーカー「葉桐」の葉桐社長は「私がこの仕事を始めた40年前から、築地さんのお茶の質はほかと明らかに違いました」と語る。築地親子の茶葉は、ほかとブレンドされることなく、独自のブランドで売りに出されていた。近年、ひとつの農園で作られた単一品種の茶葉を「シングルオリジン」と言い表す流れがあるが、築地親子はまさにその走りだったのだ。

少量で品質に特化した商品を栽培する方法は世界でも見られる。コーヒー豆なんかのシングルオリジンはスタバで豆を買ったことがある人にはお馴染み。少し高いのだが決して手の出ない価格ではない。それでいて農家にきちんと還元できる価格設定で良質なコーヒー豆を届けることができる。他の農作物にもこういう取り組みや売り方が広まってきている。

次世代の農家がチャレンジしてること、農家の今がわかる書籍。これからの農業の形を示してくれていて、衰退する農業に再びスポットを当て若者に就労に寄与する書籍。

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