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地頭力を鍛える|細谷 功|「結論から」「全体から」「単純に」考える三つの思考力

「結論から」「全体から」「単純に」考える三つの思考力で構成される地頭力。三つの思考力を訓練することによって鍛えることができ、地頭力を培う強力なツールが「フェルミ推定」。それを詳しく見ていく。

地頭のよさ

まず俗に言われる「地頭のよさ」とは何かを整理しておこう。人材採用の場面でよく「地頭のいい人を採りたい」等という表現を聞く。わかったようで定義のあいまいな言葉である。

これは世に言う「頭のよさ」とはどこが違うのだろうか。読者のまわりの知人やマスコミに登場する有名人等の中から、「頭がいい」と思う人を思い浮かべてみてほしい。およそ三種類に大別できるのではないだろうか。

第一は記憶力がよく何でも知っている「物知り」の人である。複数のクイズ番組に登場して優勝をさらっているような「クイズ王」や、何カ国語にも通じている語学の達人等がこれに該当する。こういった人たちの武器は記憶力に裏付けられた知識力といえる。

第二は、対人感性が高くて人の気持ちを瞬時に察知して行動できる、「機転が利く」あるいは「気が回る」タイプの人である。このタイプはコミュニケーション力が高く、他人の気持ちを先回りして理解したり、自分の気持ちを率直に表現したりすることに長けており、感情に訴えることも得意なタイプである。具体例としては、多数の出演者を相手に軽妙な切り回しをするテレビ番組の司会者、瞬時の切り返しで笑いをとるコメディアン、あるいはお客の「心」をつかむのがうまい優秀な営業マン等、直接の顧客接点の高い職種にもこのタイプの人が多い(数年前にベストセラーになった、『生協の白石さん』(講談社)の白石さんもこのタイプの典型だろう)。

そして最後のタイプが数学の問題やパズルを解くのが得意な「考える力」の強いタイプで、これを本書では「地頭がいい」タイプと定義する。言い換えるとあらゆる問題解決をする上での基本となる考える力が地頭力といってもよい。

三つの能力はいずれもビジネス(あるいは日常生活でも)には不可欠な知的能力ではあるが、特に「地頭力」というのは、未知の領域で問題解決をしていく能力という点で、環境変化が激しく、過去の経験が未来の成功を保証するとは限らない現在において重要な能力といえる。

地頭が良いとなんでもそつなくこなせるイメージがある。記憶力、対人感性、数学的な考える力それぞれを構成する能力が高いと地頭が良いというわけだ。ビジネスのような総合力が求められる場面でこうした能力に長けた人材は重宝がられる。

フェルミ推定

フェルミ推定のさらなる応用として、これまでに述べた直接的な思考訓練以外の様々な事例を紹介する。フェルミ推定は身の回りの事象にも応用が可能である。ぜひとも「骨までしゃぶって」徹底的に活用していただくことを期待する。

■ 問題解決の方法論としてのフェルミ推定

第3章での電柱の例題を通じて問題解決の縮図としてのフェルミ推定を経験していただいた。これだけの問題であれば少し訓練すればいろいろな問題に応用して習得することはさほど難しいことではなかろう。

しかしながら、フェルミ推定を実践し、地頭力を鍛えるためのツールとして活用する最大の目的は「問題解決における基本動作の習得」にある。フェルミ推定の応用範囲は広く、本書で挙げたようなフェルミ推定ができるということは問題解決をする上での単なる必要条件であって十分条件ではない。つまり問題解決のプロフェッショナルであれば誰しもフェルミ推定の考え方ができるが、フェルミ推定が表面上でできてもそれは必ずしも日常の問題解決に適用できるとは限らないのだ。むしろそれを基礎としていかに徹底的に応用できるようにするかが課題である。読者が何か新しいことを習得するときのことを考えてみてほしい。ゴルフのスイングでもあるいは分析手法の習得でも、およそ新しいことの習得に一番効果があるのは、基本動作を地道に習得した後に複雑な状況に応用していくことではないだろうか。いかにこれを実践していくのが難しいか。

ここで再び第4章の地頭課長と積上クンの会話を思い出してほしい。現実の複雑な事象を前にすると「情報が少ないのでとりあえず収集にかかる」とか「例外的な事項にこだわって先に進まない」等というのは日常的に身の回りで起きていることである。そんなときにこのフェルミ推定の基本手順やイメージが関係者間で共有されていると、複雑な現実の呪縛にとらわれた状況の共有・課題認識・改善が容易にできるようになっていく。フェルミ推定の最大の特長は、こうした一連の問題解決のプロセスがはじめから終わりまで縮図として網羅されていることである。

例えば、何らかのデータ分析をする場合にさしたる仮説もなく「とにかくデータ収集を」といって闇雲にデータ収集を開始した部下に対して、「どうやって計算するかを決める前にいきなり外に出て周りの電柱の本数を数え始めるの?」という言い方をすれば、いまやっていることの愚かさに気がついてもらい、行動の修正を自発的にしてもらうことができるはずである。

あるいは、分析の途中で個別の部分の分析が手段でなく目的化してしまっている状況、あるいはある部分だけ枝葉末節にこだわってしまっている、または他部門のアウトプットをまったく知らずして自部門のアウトプットを正確に出すことだけ気にしている人に対して、「それって最終的に電柱の本数を出すのにどれだけ影響するの?」とか「街中の電柱の配列だけ厳密に再現しても山の中の配置はどこまで正確に表現できるの?」という言い方をすれば、全体最適の概念から外れていることに自分から気がついてもらうことが可能である。さらに筆者のこれまでの経験から、フェルミ推定のような簡単に共有できる「基本イメージ」がない場合に、概念を理解してもらうことが不可能な概念として、「少ない情報で仮説を立てる」という根本的な考え方がある。このことの意味を理解してもらうのに関してはフェルミ推定以上の有効なツールは存在しないといってもよい。フェルミ推定の基本レベルはマスターしている人でも、いざ実際の複雑な課題を目の前にすると情報や知識が少なすぎるといって仮説を立てることにしり込みしてしまう人は多いが、「電柱の本数出すよりは情報いっぱい持っているでしょ?」と指摘すれば、ボトルネックになっているのが本当の情報量ではなくてとにかく仮説を立てようという姿勢にあることに気づいてもらえるだろう。

入社面接でも取り入れている会社も多いフェルミ推定を使った問い。これが普通にできるぐらい頭の中を整理して常に準備状態にある人はやはり地頭力が高いと言えるだろう。普通の会社に入るぐらいではそこまでは求められないが、転職などではあらかじめ一定のスキルを必要とするのでこうした問いが出されることもあると準備しておいた方が良いかもしれない。

地頭力を鍛えるためにはどのような方法があるかを紹介。訓練である程度育てることができるスキルだけに是非とも身につけたい。考え方だけでも知っているとアイデアの源泉になったりと活用の幅は広い。

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