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人工知能は人間を超えるか|松尾 豊|ディープラーニングとの格闘のすえ手に入れたもの

GoogleやFacebookが開発に注力しているAI(人工知能)を日本の第一人者が解説。ディープラーニングとの格闘のすえ手に入れたものとは?それは人間を超えるのか?知能とは何かを問い直す。

人工知能の春

いま、世の中は、人工知能ブームに差しかかっている。ネットのニュースにも、新聞や雑誌、テレビにも、人工知能という言葉が踊っている。「人工知能を研究しています」と堂々と言える。「これからは人工知能の時代ですね」といろいろな人から言われる。われわれ人工知能研究者にとってはうれしい春の到来だ。種が芽を出し、葉を茂らせ、花を咲かせ始めている。だが、それは同時に、 憂鬱 の種でもある。暗くて長い冬の時代も思い起こさせるからだ。

実は、人工知能には、これまで2回のブームがあった。1956年から1960年代が第1次ブーム。1980年代が第2次ブーム。私が学生だったのは、ちょうど第2次ブームが去った後だった。

過去の2度のブームでは、人工知能研究者は、人工知能の可能性を 喧伝 した。いや、喧伝する意図はなかったのかもしれないが、世の中がそれを 煽り、そのブームに研究者たちも乗った。多くの企業が人工知能研究に殺到し、多額の国家予算が投下された。

パターンはいつも同じだ。「人工知能はもうすぐできる」、その言葉にみんな踊った。しかし、思ったほど技術は進展しなかった。思い描いていた未来は実現しなかった。人工知能はあちこちで壁にぶち当たり、行き詰まり、停滞した。そうこうするうち、人は去り、予算も削られ、「人工知能なんてできないじゃないか」と世間はそっぽを向いてしまう。期待が大きかった分だけ失望も大きかった。

楽しい時間の後には冷たい現実が待っていた。人工知能研究者にとっては大変につらく長い冬の時代がやってきた。

2度の冬の時代、人工知能という言葉を発することさえ 憚 られるような雰囲気の中、「いつか人工知能をつくりたい」「知能の謎を解明したい」という研究者の思いが人工知能研究を支えていた。多くの研究者が現実的なテーマにシフトし、本当の知的好奇心をひた隠しにして、表向きは人工知能という看板を下ろして研究を続けた。

いま、三たびめぐってきた人工知能の春の訪れに当たり、同じ過ちを繰り返してはいけないと強く思う。ブームは危険だ。実力を超えた期待には、いかなるときも慎重であらねばならない。世間が技術の可能性と限界を理解せず、ただやみくもに賞賛することはとても怖い。

これまで冬の時代を耐えてきた研究者の地道な努力があるから、いまがある。だからこそ私は、読者のみなさんに、人工知能の現在の実力、現在の状況、そしてその可能性をできるだけ正しく理解してほしいと思う。それが本書の大きな目的だ。

人工知能のもたらすものは三度目の正直でどこまで進むか。前進していることは確かだがディープラーニングをはじめとする技術でどこまで学習は進むのか?僕ら一般人がその恩恵を受けつつある現在、商業転用はどこまで進むのか?こうしている間にも新しいAIを使った技術が急ピッチで開発されている。便利さと引き換えになるものは何かも考えつつ注視したい。

機械学習の静かな広がり

機械学習はニューラルネットワークをつくる「学習フェーズ」と、できあがったニューラルネットワークを使って正解を出す「予測フェーズ」の2つに分かれる。学習フェーズは、1000件から100万件ほどの大量のデータを入力し、答え合わせをして、間違うたびにとを適切な値に修正するという作業をひたすら繰り返す。8万個の重みづけを修正するために、7万枚の画像をひたすら入力し続けるわけで、この作業にはとても時間がかかる。通常は数秒から、長いときは数日間かかることもある。

しかし、いったんできてしまえば、使うときは簡単で、できあがった重みづけを使って、これまでの訓練用データとは違う新しいデータを入力して、出力を計算する。この作業は一瞬で終わる。1枚の画像に対して、隠れ層を計算するための簡単な足し算と、出力層を計算するための簡単な足し算をするだけなので、1秒もかからない。

人間も学習しているときは時間がかかるが、学習した成果を使って判断するときは一瞬でできる。この手書きの文字が「3」を表すとわかるようになるまで、生まれてから数年かかるが、いったんわかってしまえば、次からは見た瞬間「これは3だ」とわかる。それと同じだ。

余談になるが、日本は高齢化社会になってきており、高齢の方の学習能力は、残念ながら若者に劣る。したがって、新しいことを学習するのは大変だ。一方で、判断・識別する能力は、長い年月をかけてつくられており、しかも使う際には簡単に早く使うことができる。高齢者の判断・識別能力をうまく役立てていくことは、昔で言えば老人の知恵を活かすということだろうが、高齢化社会において重要なことかもしれない。 「こういうやつは将来伸びる」とか、「組織がこうなると悪い傾向だ」などの、人間や組織などの時代を経ても変わらないものを見る役割として、高齢の方が企業の会長や相談役にいるのはよくわかる。判断・識別能力で勝負できるからである。

機械学習によって学ばせてしまえば、あとはその蓄積された情報から答えを導き出すフェーズはすぐそこだ。これを効率よく学ばせる知恵を捻り出して今に至る。長い開発期間に見合うだけの判断能力や問題解決能力が人工知能に搭載されればあとはそれを使って生産するだけだ。これまで以上に生産能力は増し人類を新たなステージにあげるものとなるか、逆に支配されるかは学習次第というところか。人間の曖昧な判断能力を補完するものとなればより良い未来を創造する魔法の鍵となることだろう。

人工知能を知ることは我々人間の知性を知ることとなる。人間を知ることをしなければ、この先人工知能を恐れなければならなくなるかもしれない。

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