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世界「最終」戦争論で身近な問題からテロや戦争まで近代の終焉を考える

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私たちの時代が、百年か、二百年、あるいは、それ以上の単位の歴史の分岐点にあるかもしれないという予感のもと、日本を代表する思想家の内田樹氏と姜尚中氏の対談を通し「世界史」の大きな図柄を描く。時代を読み解く羅針盤とすべく、右傾化、テロ、「金のある者が偉い」さらには、「命より金が大事」というグローバリズムなど身近な出来事に迫る書籍。

社会的上昇の機会のない移民系若者たち

フランスでのテロにより考えさせられるのは、イスラム系移民が500万人、つまり人口の1割近くを抱えているという事実。そして彼らはフランス社会に適切には統合されていない。パリの郊外(バンリュー)と呼ばれる巨大なスラムにイスラム系移民は押し込まれている。そこで生まれた移民の子供たちは、社会的上昇の機会を制度的に奪われている。フランスは自由・平等・友愛を掲げていて学校教育は大体無償だが、文化資本を獲得できない環境に投じられた子供たちには社会的上昇のチャンスは事実上ない。

極右思想を引きずるフランス

このところ国民戦線は議会選挙でも、第一回投票では一位、第二回投票のときに他の政党が統一候補を出してかろうじて国民戦線が第一党になることを抑えた。フランスが「自由・平等・友愛」という「表の顔」の裏に、ファシズムと反ユダヤ主義と移民排斥の暴力的な顔を常に隠し持っている証拠だ。フランスの人々の中にイスラム恐怖症が強まれば、この先、極右政権がフランスに誕生する可能性はあり得るという。フランスではマリーヌ・ル・ペン率いる国民戦線が、アメリカでは共和党のドナルド・トランプ氏が大統領候補としてある層から熱狂的な支持を集めている。両者とも大変な排外主義者で、この二人が大統領になる可能性が皆無ではないわけだ。

日常生活の中に忽然と出現する「戦争」=テロリズム

戦争のカテゴリーの変化をシンボリックに言うと、カラシニコフ(ソ連時代に開発され世界中に流通している安価な自動小銃)VS核抑止力という感じではないだろうか。核が使わないことを前提に成り立つ抑止力であるのに対し、カラシニコフは一丁あるだけで、自分が死ぬ覚悟があれば大変なことができるということをテロにより知ったかたちになる。空爆により一般市民を巻き込むなど、こういった戦場で行われる行為がいわばブーメランのようにテロという形で私たちの日常に返ってきているとも言えよう。

肝に命じることは「金より命が大事」

兵器は市場が絶対に飽和しない夢の商品なのです。だから、資本主義が成長の限界に達したときに、製造業者たちが兵器産業にすがりつくようになるのは経済合理性から考えたり当然の結論なのです。

兵器のニーズを増大させるため世界中で戦争が起きることが重要だ。だからそういった産業に従事するビジネスマンは「戦争ができる国」になりたいという安倍首相を支持してる。少し大袈裟だろうが、そういった側面がないとは言えない。彼らは「命より金」だといい世界各国で戦争をしてもらわないと困るのだ。「命より金」という点ではブラック企業で社員に対し「死ぬまで働け」と躊躇なく言えてしまうオーナーと似ている。「金より命が大事」と肝に命じたいところだ。

日本のシンガポール化

生まれてからずっと経済成長モデル以外に知らない。それ以外のオルタナティブがあり得るということを考えたことさえない。だとすると、成長し続けるためにはとりあえずシンガポールをモデルしするしかない。

反政府的なメディアは潰し、労働組合も潰す。金儲け以外の学術には公的支出をしない。「経済成長」のために一億総活躍するシステムを作り、世界中から資本を呼び込む。巨大なシンガポール化だが、日本とシンガポールでは国土も資源も違う。里山へのインフラ配備は費用対効果が薄いのでコンパクトシティー化で切り捨てなくてはならない。

蔓延する70年の平和に飽きた嫌厭感。個別的な政策や制度の不具合を点検して「ここを変えよう」というならわかるが、今の体制にうんざりしたから全部変えようという空気が今の安倍政権を支えているのかもしれない。

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