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アメリカ型ポピュリズムの恐怖 「トヨタたたき」はなぜ起きたか|齋藤 淳

2009年に起こった一連のトヨタ叩きを見ながら民主主義がまさにポピュリズム(大衆迎合)と化した象徴的な瞬間を考える。集団ヒステリーとも言えるこのような事態が今後また起きて経済に打撃を与えることはあり得るのか?アメリカの社会構造の欠陥を炙り出す。

リコール問題の真相

米国で余儀なくされたマット関連のリコール、アクセルペダル関連のリコール、どちらに関しても、トヨタの経営への打撃という面では日本でも話題を集めたが、日本の消費者の間ではいまひとつピンとこない品質問題だった。

アクセルペダルがマットに引っ掛かる不具合に関しては、ある程度は想像できる話ではあったが、一九〇キロ以上ものスピードが出て車が全く止まらなくなるというような話は、日本人からすると現実味が薄かった。

また、アクセルペダルが戻りにくいなどの不具合に関しても、欠陥ペダルの部品がアメリカ製で、日本で生産されている車には搭載されていなかったことなどから、日本の消費者にとっては引き続き対岸の火事のような話だった。

しかし、新型「プリウス」のブレーキの不具合に関しては、日本国内でも苦情などが一部出ていたことから、アメリカのみならず、日本でも自国の問題として騒ぎが大きくなった。

アメリカでのマットやアクセルペダル関連のリコール問題をあまり深刻に受け止めていなかった日本人の間にさえも、「トヨタはどうなっているんだ」「トヨタは大丈夫か」などといった不信感が芽生える格好となった。

ただ、「プリウス」のブレーキ問題に関しては、アメリカ人と日本人とでは微妙に受け止め方が違っていた。

アメリカでは、それまでのマットやアクセルペダル関連のリコール問題の延長線上で、「意図しない急加速」を引き起こす新たな欠陥が見つかったという視点から騒ぎが大きくなった。

これに対し日本では、急加速疑惑が強まったというよりも、むしろ品質問題に対するトヨタの姿勢などに疑問を投じる批判の声が各方面から上がる格好となった。

ブレーキの不具合で最終的にリコールに踏み切る六日前の一〇年二月三日の記者会見では、品質保証担当の佐々木眞一副社長は「フィーリング(運転感覚)の問題」と説明。車両の欠陥ではないとする立場を取った。ただその一方で、一月末以降に生産した「プリウス」のブレーキシステムについては公表しないまま独自に改良していたことが判明。説明の矛盾が明らかになったことから、トヨタは「顧客を軽視している」といった批判などを日本で浴びる結果となった。

ブレーキとアクセルなど重要なパーツで欠陥が出ることは考えにくいのだが、事件の真相は引っ込みがつかなくなった顧客の暴走とポピュリズムの追い風なのではなかろうか。そんな単純な答えが正解ではないかと思うのだが、この問題は国家を上げて問題化したのが面白いところ。

売れすぎの注意

アメリカでの販売台数が加速度的に増加するにつれ、世界全体での販売台数も急速に拡大……。いつしか、トヨタは長きにわたり自動車業界の王座に君臨してきたGMの地位を脅かす存在になっていた。

〇六、〇七年には、既に両社は世界販売でほぼ互角の闘いを演じていたものの、トヨタ(グループのダイハツ工業と日野自動車を含む)が完全と言える形で初めてGMを抜き去ったのは、〇八年だった。ちなみに世界生産では、既にトヨタが〇七年にGMを抜き去り初めて首位に立っていた。

ただ、世界販売でトヨタが首位に立った〇八年は、アメリカで未曽有の金融危機が発生した年だった。このため、アメリカ国内でトヨタよりも販売台数を大幅に減らしたGMが、世界販売首位の座を明け渡さざるを得ない状況に追い込まれたのだ。

また、この年はニューヨーク原油先物相場が異常に高騰して、七月に取引途中の史上最高値となる一四七・二七ドルを付けた年で、原油価格になびいてガソリン価格も急騰。ガソリンがぶ飲みの大型車を主力としたGMに逆風が吹き荒れていたことも、トヨタが初の首位に立てた要因だった。

アメリカの景気後退や信用不安などのあおりを直接受けたビッグスリーは、急速に資金繰りが悪化。結果的にフォードは経営危機を回避できたものの、GMとクライスラーはその後、経営破綻を余儀なくされた。

〇九年六月一日に連邦破産法一一条の適用を申請したGMは、アメリカ政府やカナダ政府などのバックアップを受けて、わずか四〇日で破産法からの脱却に成功。同年七月一〇日に、実質国有化の下で「新生GM」として再生を果たした。

しかし、短期間のうちに法的整理から脱出することができたとはいえ、破綻前から破綻後にかけて、一部工場閉鎖や人員削減などの「リストラ(事業再構築)のメス」が入ったため、病み上がりの状態であることは間違いなかった。

日本だと長い物には巻かれろ的な考え方があるが、アメリカでは力を持つと一定数のアンチが出現し足を引っ張るといった行動が一般的。何かよからぬことをやっているのではないかという疑心暗鬼から攻撃に転じるわけだがそのような傾向がアメリカではある。

アメリカのポピュリズムはトランプ政権下で顕在化した感が強いが元々持っている要素なのかもしれない。トヨタ叩きを通じてアメリカの構造を知る書籍。

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