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これが「日本の民主主義」テーマごとに政治の変遷を追う

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民主主義とは「人民」(demos)と「権力」(kratia)という二つの語が合体したもので、つまりは人民が権力を持ち、人民のために権力を行使する政治思想や政治形態をいいます。世界には革命や、政治運動によって民主主義を勝ち取った国もありますが、日本の場合、敗戦によって、憲法とともにアメリカからもたらされました。戦後の復興とともに政治的にも、民主主義が根を下ろした国となった日本。日本の民主主義についてテーマごとに政治の変遷をたどった書籍。

自衛隊出動を促したが

流血の国会突入デモにより、危機感を持った岸首相は、赤城宗徳防衛庁長官に対し、自衛隊の治安出動を促します。治安維持のために、総理大臣が自衛隊に出動命令を出すのではなく、防衛庁長官の意向を確認しながら出動を検討したのでした。しかし、赤城長官はこれを拒否します。武器を備えた自衛隊が出動すれば死者が出る可能性は高くなり、そうなれば国民の非難は自衛隊に向けられるのは必至です。一方でデモ隊を無傷で制圧できなければ、また批判も集中します。赤城の判断に岸も従わざるをえませんでした。

万が一の事態に備えて陸上自衛隊が都内に待機していたが、銃を持った自衛隊が出動したら、血の気の多い学生たちは逆上して、自衛隊に投石などを繰り返し、たまりかねた自衛隊が発砲なんてシナリオも考えられたがそうはならなかった。赤城長官の冷静な判断が功を奏したというところだろう。当時のデモ隊のスローガンは「安保反対!岸を倒せ!」でしたが、退陣後は運動が急速に勢いを弱めることとなる。多くの国民は、庶民感覚のないエリート臭の強い元高級官僚でA級戦犯容疑者であった岸元総理の退陣を願っていた。そのため強行採決で新安保条約が承認されたにもかかわらず、岸内閣が総辞職したことで幕引きとなった。

日本の安全保障を巡る環境が変化

安部総理は、北朝鮮の挑発行為や中国の南沙諸島への進出により、日本の安全保障をめぐる環境が変化しているとして、集団的自衛権の行使を認めるべきだと主張します。

過去の日本政府は、憲法9条の制約により、集団的自衛権は持っていても行使することはできない、という立場をとってきました。しかし 政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の派遣部隊に安全保障関連法に基づく新任務「駆けつけ警護」などを付与する方針を固めた。武器輸出に関しても、それまで原則として武器の輸出を禁止してきた「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」に転換し「武器」を「防衛装備」と言い換え「輸出」を「移転」と言い換えて限定的ながら武器の輸出が可能に。戦後、軍隊ではないとして設立された警察予備隊は、ついに海外での武力行使が可能な「軍隊」となったのだ。少しずつ変化を遂げてきた日本の防衛政策と自衛隊、日本がどうあるべきか、議論が不足したまま、確実に日本は変わりつつある。

各国が自国が有利になるよう画策するTPP

貿易の自由化に関して、各国の思惑はほぼ同じです。競争力のある得意な産業分野においては、相手国の関税を撤廃してより多く売れるようにしてもらいたい。一方で競争力の低い分野では、ある程度関税を残し、輸入を制限して国内の産業を守りたい。これが各国の本音です。

すべての分野で関税を撤廃し競争力の低い分野は淘汰し、完全に自由な貿易が行われることが消費者にとって良い結果になると思う。例外なく関税が撤廃されることにより国家レベルで競争力の強い産業を作る。そうでなければTPPのメリットも薄れると素人目には映るのだが、そう簡単なものでもないのかな。過去にもオレンジや牛肉といったものが自由化されたことがあるが、その結果、柑橘類は品種改良が進み、牛肉に関しても国産はブランド化してきた。「日本のみかん農家と畜産農家は壊滅する」と言われていたが、そうはならなかった。TPP交渉はアメリカのオバマ政権が主導してきたが次の大統領候補は2人とも「TPP反対」これからの交渉も難航するか御破算となるかが注目だ。

使用済み核燃料も問題だ

原発が建設される時点で、このような強い放射性の使用済み核燃料が出ることは、もちろんわかっていました。しかし、「やがてその処理方法も見つかるだろう」という甘い観測のまま進められてきたのです。ゴミの問題を放置したまま建設と稼動を先行させたこと。これが、原発が「トイレなきマンション」と称されるゆえんです。

使用済み核燃料をそのまま処分している国もありますが、日本では再処理し再び核燃料として使用するリサイクルが行われているそう。使用済み核燃料からウラン235とプルトニウム239を取り出し、MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料)に加工して再度原発で使うというもの。3.11で原発反対気運が高まったことにより、原発関連の研究者を目指す人や予算が激減し、使用済み核燃料をを処理する技術が発展せず、処理に困るのではないかと懸念している。「トイレなきマンション」に仮設でも良いからトイレを作らねばならない。

後半では「税制の変遷と消費税」「政治とメディア」「五五年体制以後の連立政権」「これからの日本の民主主義」をテーマに変遷をたどる。巻末には43代東久邇宮稔彦〜96・97代安倍晋三の歴代首相の解説とそれぞれの首相の内政力・外交力・演説力・指導力の四項目で採点。当時を懐かしみながら読めます。

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