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『新聞の運命 事実と実情の記事』山本 七平

超情報化社会にあって、新聞は「情報」たり得るか?

日本社会に内在するさまざまな問題の鋭い御意見番・山本七平が繰り広げる「新聞紙学」(「文藝春秋」誌上に連載した原稿をもとに)。「新聞は沈黙を許されない気の毒な存在」「なぜ社説を読むのが苦痛なのか」「新聞は角栄的体質(無哲学・無思想・思索不能)をもっている」「三ズ主義的(八方美人的)報道」「東京紙が存在する?(全日本の東京化問題)」「言文一致から顔文一致へ」などなど、読者離れが著しい「新聞」というメディアにメスを入れる。

「社説」というもの

確かに「社説」というものは、新聞社の、社としての意見、主張あるいは政府や社会への渓谷であってよい。だが警告ならまずはっきりと「警告」と書き、次に、その内容を冒頭に短く要約する。これが新聞の行き方のはずだから、他紙もこれを取り入れた方が読者に親切ではないか。というのは、新聞をすみからすみまで読む人間は、多忙な日本ではまず例外であり、テレビを五時間近く見る女性でさえ二十分だという。このわずか二十分以内に、社説から広告まで全部読める人間はいないであろう。人びとは見出しとリードで、関心のある記事を選別しているはずである。したがって、今日の社説が自分にとって関心のあることか否かを、まず、見出しとリードで判別できるようにした方が、読者に親切ではないか。そして興味がなければリードで要約を知ればよく、そのほうが、全然読まれないよりも、新聞にとって有利なはずである。

僕は新聞をほとんど読まない。ニュースはテレビで充分お腹いっぱいになるし、特に興味のある記事でもない限りスルーが基本。唯一読むのが書籍の広告と週に一度の書評ページ。情報の活用の仕方は人それぞれなので、僕のような人も多いのではなかろうか。広告読んで書籍を買うんだから新聞社に広告載せた出版社も情報を得た僕も満足いっている。だから、新聞をつぶさに読まなくても、それでよいのではと思ったりもする。

「守る者」こそ善意の加害者になりやすい

「新聞が個人の基本的人権を守る」という言葉は「軍人は国民の生命財産を守る」という言葉同様、非常に危険な一面を持つ諸刃の剣のような言葉であって、一歩誤れば軍による国民の使い棄てを正当化するように、報道もしくわキャンペインにおける一人間の使い棄てを正当化しかねない。そしてこの際、さらに困ることは、両者とも善意から(と言えないまでも「悪意なく」)それを行なっていることである。

「守る者」こそ普通の人間以上に善意の加害者になりやすい側面を持っている。その性質上、その加害は悪意のそれかそれ以上に正当化できないはずだ。しばしば起こるこのミスマッチは被害者から正当な抗弁の権利を奪う点で、最悪の加害者となるわけだ。そして本人がこの危険性を意識していないと、人を破滅に追い込みながら、本人は何も責任を負わず、正義の人と振る舞うことになるのだ。

取材力なるものの信憑性

自分の属する業界のことが新聞に出ると、誰でも「ヤレ、ヤレ、新聞とは何もわかっていないで、なにやかやと『わけ知り顔』に書くだけの存在だな」という気がするそうだが、今回の筑摩書房の倒産記事(注:一九七八年)で、私もその感を新たにした。出版界が新聞記事になることは珍しいが、他の業界、特に基幹産業は常に記事になっている。その記事の水準も「筑摩書房の倒産記事」と同水準ならば、新聞だけでその業界を知ったつもりになっている人は、とんでもない誤解をしていることになるであろう。

新聞記事の信憑性を疑っている人はどのくらいの割合でいるのだろうか。ネットニュースとかだとバズる記事が上位に来ていたりして、その記事はもはやエンターテインメント。フェイクニュースが紛れ込んでいてもおかしくないという認識を持って読むのだが、新聞だと何の疑いもなく信じてしまうのではなかろうか。僕のように新聞記事はきちんと裏どりしているから信憑性が高いと思い込んでいる人は意外と多いのでは?

誤報と虚偽の報道は別

報道には「不偏不党」「厳正中立」とか「公正」とか紋切り型の要請があるが、このことは一言でいえば「正直」ということであろう。人間には誤りがあり、いかなる報道も無謬ではあり得ず、誤報は避け得ない。だが誤報は決して虚偽の報道、すなわち意識的な不正直な報道ではない。したがって誤りは訂正すれば良いのであって、この点は問題にならない。

人間が記事を書く以上、たまに誤報があるのは仕方がないこと。誤りがあれば訂正すれば丸く収まるが虚偽の報道はそうはいかない。ネットニュースとかを見ていると明らかにバズることを狙った怪しげな記事に出くわすことがあるが、新聞ではこうしたことはあまり起こらない。

スマホでニュースを読むようになって久しいが、紙媒体は今後どのようになっていくのか方向性をつかむのには、その特徴を掴んでおく必要がある。超情報社会で新聞は情報足りうるか考えさせられる書籍です。

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