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企業はなぜ危機対応に失敗するのか|郷原 信郎

かつてない重大なリスクにさらされる日本企業へ、コンプライアンスの第一人者による緊急書き下ろし!2013年に社会を揺るがした「巨大不祥事」の本質に迫る!

ひたすら頭を下げる不祥事企業

日本には「潔く謝ればすべてを水に流してもらえる」という独特の文化がある。だから、不祥事企業の側は、ひたすら頭を下げるのであろう。しかし、このところの不祥事では、いくら経営トップが記者会見で謝って頭を下げても、批判は沈静化しない。批判はいつしか非難に、そして、バッシングに変わる。そこでは一切の弁解は受け入れられない。提携ローンを通じての「暴力団員向け融資問題」が、金融業界全体の「反社向け融資問題」に発展したみずほ銀行の不祥事、傘下のホテルやレストランでの「メニューの誤表示」問題が、ホテル業界、外食産業のみならず百貨店業界をも巻き込んだ「食材偽装」問題に発展した阪急阪神ホテルズの不祥事、いずれも、個別企業の問題が、経済社会を揺るがす「巨大不祥事」に発展した事例だ。そのようなことが起きる最大の原因は、企業の危機対応の失敗である。問題が表面化した時点で企業側が対応を誤ると、問題の中身が正しく理解されない。背景、構造などに目が向けられないまま、その企業だけの不祥事として批判が炎上し、それが業界全体に拡大していく。最初から業界全体の問題だとわかっていれば、メディアの取り上げ方も異なっていたはずだ。しかし、一度、個別企業の不祥事として、新聞、テレビなどがそろって大々的に取り上げると、後で批判が見直されたり、取り下げられたりすることはほとんどない。そういう意味では、マスコミの批判は「不可逆的」である。

最近では謝罪会見のお粗末さが出まくっている企業等が多い。火に油をそそぐ事になりかねない記者会見が稚拙だったせいで、SNSで批判的意見が拡散されてしまい、収拾がつかなくなる。マスコミもしかり。

みずほ銀行「暴力団員向け融資」問題

二〇一三年九月二七日、金融庁はみずほ銀行に対して、暴力団組員ら反社会的勢力への融資の問題で、銀行法に基づく業務改善命令を出した。その内容は、みずほ銀行が、信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)などを通じて融資をしていた提携自動車ローンに関して、「(一)多数の反社会的勢力との取引が存在することを把握してから二年以上も反社会的勢力との取引の防止・解消のための抜本的な対応を行っていなかったこと、(二)反社会的勢力との取引が多数存在するという情報も担当役員止まりとなっていること等、経営管理態勢、内部管理態勢、法令等遵守態勢に重大な問題点が認められた」点を指摘して改善を求めるものであった。問題とされた融資は、二〇一二年一二月から始まった金融庁検査の際に発覚した。その融資は二三〇件、総額約二億円であり、金融庁はみずほ銀行に、一〇月二八日までに業務改善計画を出すよう求めた。この命令を受けたみずほ銀行は「深く反省し、内部管理態勢のいっそうの強化に取り組む」とのコメントを発表しただけで、記者会見を開かず、広報担当者による状況説明だけで済ませたため、報道などで「説明責任を十分に果たしていない」との批判が急速に広がることとなった。

初動対応に失敗した恒例がみずほ銀行の「暴力団向け融資」だろう。会見を開かずコメントのみなんてこのご時世逃げていると思われても仕方がない。特に反社会勢力との接点があったことは致命的で許しがたい。

カネボウ化粧品「白斑被害」問題

カネボウ化粧品が、同社の化粧品が「白斑被害」の原因である可能性を認識して対応を始めたのは二〇一三年五月であった。ある皮膚科医が、肌がまだらに白くなった人が三人いると連絡してきたことから、担当者が問題を経営陣に報告し、さかのぼって社内調査をしたところ、二〇一一年以降で同じような症状が出たと思われる例が三九件発見された。そこで、カネボウ化粧品はロドデノールを含有する商品の自主回収を決定し、七月四日に発表したのである。自主回収の発表時点では、カネボウ化粧品が調査で確認したとしていた発症事例は三九件だったが、発表以降、問い合わせが殺到し、約三週間(七月二三日時点)で問い合わせは一〇万件を超え、六八〇八人から症状や不安を訴える申し出があり、同社が「症状が重い基準」として設定した「三箇所以上の白斑」「五㎝以上の白斑」「顔に明らかな白斑」のいずれか(三症状)に該当する人が、二二五〇人確認された。一一月一〇日の時点では、「顔や手など広範囲にわたり明らかな白斑」 がある人が一〇四一人、三症状に該当する人が四五一三人、軽度な症状の人が七六五三人、完治・ほぼ回復した人が三四〇一人、合計一万六六〇八人に症状が現れている。このような事態を受けて、花王は、八月一二日にはカネボウ化粧品の品質保証部門と顧客対応部門を花王に統合、さらに、一〇月八日にはカネボウ化粧品の研究と生産の両部門を二〇一四年一月に花王に統合することを発表した。花王はカネボウ化粧品のブランドを維持する方針だが、カネボウ化粧品は商品戦略など限られた業務を行う事業会社に縮小され、カネボウ化粧品の社員一万三〇〇〇人の大半が花王に移る見通しとなった。

女性が綺麗になりたいという願望のもと買う化粧品で見るも無残な「白斑」が出てしまうなんて。体質の問題も多少はあるだろうが、そういった健康被害は事前に厳しくチェックしてから販売に至るべき。

政治家のスキャンダルや失言とともに企業の不祥事が止まりません。なぜ企業が危機対応に失敗するのかということを細かな事例をもとに紐解きます。

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