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ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀

資本主義と民主主義の世の中では一部の人間が圧倒的な資本の元、世の中を支配する世界になりがち。こうした支配から脱却するにはどのように世界を変えていけば良いのか。一部の富裕層による支配からの脱却を目指す新しいビジョンがここに。

不完全な市場システム

家を買うプロセスを考えてみよう。住宅市場のうち、完全競争状態にいちばん近いのは、大都市の住宅市場である。大都市の住宅市場は、家が絶えず供給され、たくさんの人が家を買おうとしている。だが、そうしたところで家を買うか売るかしたことがある人なら誰でも知っているように、システムは完全とはほど遠い。立地も、設備も、眺望も、日当たりも、家によってそれぞれ違う。同質とはおよそかけ離れており、穀物とは別物である(穀物が同質なのは、入念なマーケットデザインの結果にほかならない ★ 31)。取引がまとまらなければ、住宅の購入は何カ月も先送りされることになり、その間に買い手は条件に合いそうな他の家を探す。そうだとすると、買い手にも売り手にも強い交渉力があることになる。どちらも相手がいくらなら支払ってもいいと考えているか、いくらなら受け入れてもいいと考えているかを見きわめて、最も有利な価格を勝ち取ろうと躍起になる。そんな戦略的行動のせいで取引が失敗してしまうこともある。たとえうまくいったとしても、その過程で膨大な時間と労力が浪費されている。複雑なビジネス取引だと、問題が拡大する。たとえば、土地開発計画では、工場やモールを建てるために隣接する数多くの土地を買い上げなければいけない。デベロッパーのリスクがとても高いので、既存の住宅の所有者は交渉で優位に立つ。多数の住宅所有者が高額の支払いを求めて合意を渋れば、計画が遅れたり、場合によってはストップしたりする。個人や企業が参加する市場のほとんどは、穀物市場よりも住宅市場に近い。工場も、知的財産も、企業も、絵画も、どれも非常に特異的で、二つとして同じものが存在しない資産である。

この間、2つの不動産屋が買い手に不動産を紹介するプレゼンをしてどちらの不動産屋の物件を買うか勝負する番組をやっていた。不動産屋の必死さが面白かったが、いわゆるテレビ的なもので、実際に不動産屋に依頼したらあそこまで親身になって家探しを手伝ってくれるだろうか?家が欲しい買う側がどうしても足元を見られる市場のような気がする。僕は賃貸しか探したことしかないが、こちらの懐事情を察してギリギリ払える程度の物件ばかり紹介されて、結局最後は某市長がオーナーをやっている物件を激推ししてきた。長いものには巻かれるのがこの世界なのかと思ったが、結局すぐに引き払う事情があって即解約。

「シグナリング」と「保有効果」が消滅する

中古車などの資産の保有者はたいてい、その資産の品質を潜在的な買い手よりもよくわかっている。そのため、保有者が高い価格を要求するかもしれない。それは、買い手がその金額を支払ってもいいと考えているだろうと踏んでいるだけでなく、高い価格をつければ、保有者が車を手放したくないと考えていることを伝えるシグナルになるからでもある。この車には高い価値があるに違いないと買い手に思わせる策略だ。そうしたシグナリングは、交渉本の定番の一つである。市場で価格交渉をしたことがある人なら誰でも、この品にはこんなに価値があるんですよと、売り手にとうとうと語られたことがあるだろう。 COST はシグナリングに税金をかけるので、シグナリングの害が最小限に抑えられる。もう一つ、取引の障害となるのが、ノーベル賞経済学者のリチャード・セイラーが明らかにした「保有効果」である ★ 52。セイラーは、あるものを買うために支払ってもいいと考える最大の金額は、それを手放すために受け入れてもいいと考える最小の金額よりも低いことを発見した。実際に触ったことも使ったこともなくてもそうなのだ。抽象的なものでさえ、自分の所有物には高い価値を感じるようである。最近の研究の結果として得られた証拠によれば、保有効果とは、人間に備わっている根源的な執着心というよりも、交渉で優位に立つために使うヒューリスティック(無意識に使っている経験則)である。あなたが自分の所有するものを心から大切にしているように見えると、相手はそれを価値のあるものと考えて、高い金額を提示するようになりやすい。

僕は新車で購入する派だったがどのみち一度人の手に渡ってしまえば、中古車となるのだから新車にこだわる必要はないだろう。これは単なる見栄でしかない。自分の持つ資産を買い手の立場に立って考えてみれば、資産価値というのはだいたいわかる。あなたの住んでいる中古物件はリノベーションしたらどのくらいで売れるのかを考えたことはあるか?正しい相場感が高い買い物や売却のとき損しない秘訣なのかもしれない。

自由な社会を考える時、既得権をなくし独占をぶっ壊す強い力が必要だ。どの業界も最初は数多くのライバル会社があったのに統廃合を経て気がついたらビッグ3による寡占状態になっているなんてことが多い。本当に自由な市場を目指すなら携帯会社のようにサービスで風穴を開けるしかない。それでもあぐらをかく企業が多いのは残念なことだ。競争社会で生き残るための資本主義、民主主義の未来とは?

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