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経済成長だけではない真の成長とは?

危機の現場を歩いていると、気づくことがあった。欧州各国は、いい面も悪い面も日本と似ている。バブル発生と崩壊、金融不安、財政悪化、金融緩和‥‥。どれもこれも、日本を見ているような感覚になる。日本の反面教師としても、欧州には学ぶべき材料が揃っている。米国と中国のに2国を見ているだけでは、世界の大きな潮流をつかめない。それが欧州を見ることで、見えてくるのだ。経済成長だけではない真の成長、人類の、そして社会の成熟が求められる今、欧州危機と反グローバリズムを読み解いて行く書籍。

EU離脱〜フランスの動向

2017年4〜5月に予定されるフランス大統領選で、右翼政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が勝てば、国民投票を行うと公言している。フランスですらユーロ離脱をすれば独り立ちは難しく、経済が破錠する恐れがある。だから、もし国民投票で離脱が決まっても、実際に離脱するのは難しいかのしれない。ただルペン氏が大統領になり、国民投票で離脱派が勝利すれば、「EU崩壊」を意味するととらえられ、世界のマーケットが大混乱に陥る可能性がある。

先にEU離脱を決めたイギリス。仮に2017年3月末に通告を行ったとしたら、2019年3月末に離脱することに。EUからの離脱は前例も無いためずれ込む可能性はあるが、それでも2020年頃には離脱するのではないかと思います。通告が行われた時点でまた混乱が起きることが予想され目が離せません。ユーロ危機が、ユーロを使う国々と、使わないイギリスとの間に大きな溝を作っていった。通貨が同じだと、ある国が危機に陥った時、支援しなければならない。実際ユーロ危機の最中、EUの会議はほぼ危機対応に割かれた。EUと距離を置いていたイギリスの孤立感はどんどん深まり、ユーロ圏の国に足を引っ張られてる感覚を持つようになっていった。

イギリスのEU離脱決定は、すぐさまポンドの急落につながり、ポンドは約31年ぶりの安値水準に。グローバル化が進みマネーはあっという間に国境を越えていく。1日の外国為替取引量は約6兆6000億ドルとも言われていて、いくら国家が対抗しようとしても、市場原理に屈するしかない。それは明らかになったのがブラックウェンズデーだ。

バブル資本主義の副作用〜格差拡大

英国がEUからの離脱を決めた背景には、金融緩和を繰り返す「バブル資本主義」の副作用としての格差拡大がある。お金や資産を持つ人はどんどんもうかり、それ以外の人たちはずり落ちざるを得ない。そんな荒廃した、枯れ葉のような状況に、ポピュリズムの火はつきやすく、そして炎は広がりやすい。そうした土壌を作ったのが、危機と金融緩和である。

イギリスの中央銀行は、2008年のリーマン・ショック以降、一貫して金融緩和を続けている。EU離脱が決まって以降は、その影響で景気が悪くなるのを防ごうと、政策金利を引き下げ、国債などの資産を買って市場に大量のマネーを流す量的緩和の規模を拡大した。リーマン・ショック後、すばやく大規模な量的緩和に踏み切ったイギリスとアメリカは、日本やその他のユーロ圏の国々と違い回復が早かったと分析するエコノミストもいる。開く格差といえば、ロンドンのマンションの販売価格が安くても約6300万円、高いものでは約18億4000万円と普通のイギリス人では手の届かない価格まで高騰。実際に購入しているのは中国やロシア、中東の富豪で投資目的で買っているので、夜になるとあかりの灯らない(住んでいないので)ゴーストタウンのようになっている。転売目的のため賃貸に出さず放って置いている状況だ。

通貨下落と物価上昇〜ウクライナ

通貨下落と物価上昇は、自らの預金の目減りを意味する。中央銀行はドルへの両替を制限したが、人々は蓄えを外貨に替えて目減りを抑えようと、預金を引き出して市中の両替商に殺到した。ドルが出回らなくなり、インターネット上の闇市場では、交換レートが一時1ドル=40フリブナを越えた。ウクライナでは低金利のドル建て住宅ローンが一般的だったが、通貨暴落で、多くの人が住宅を失った。

日本ではずっと固定金利の住宅ローンのCMがよく流れているが、住宅ローンはリスクが大きいと感じてしまうのは僕だけだろうか。突然、会社がM&Aで外資になったりして、リストラされたり、働き手である自分自身が病気になることだって考えられる。突然トランプ大統領のような指導者が現れ、市場が混乱し、輸出企業の業績が一気に悪化するなんてことも。このような自分の頑張りとは関係のない外部の要因でピンチになることは普通にあり得ることなのだ。

早く原発を再稼働してほしいと願う〜リトアニア

「日本は東日本大地震の後、原発が止まって、火力発電のため大量のLNGを輸入しているだろう。そのせいでLNG価格が高くなっている。日本で意見が分かれている問題なのはわかっているけど、これからLNGを買おうとしている我々としては、なるべく早く再稼働してほしいんだよね」

燃料受給についても市場原理が働くため、どこかでこういったひずみが生まれるのはしょうがないことだが、自国の利益を優先すると仕方のないことなのかもしれない。

金融緩和と財政出動でお金をばらまくアベノミクスに対して、欧州の目は厳しかった。日銀が「異次元緩和」のもと、国債を高い価格でどんどん買っているため、2度にわたる消費増税を延期しても、財政不安は高まらず、国債金利が跳ね上がることもない。むしろ、消費増税の延期が、アベノミクスの一つとなっているという皮肉な結果に。本書で欧州危機と反グローバリズムを見ていくとこれからの日本の進むべき道について考えるきっかけとなるだろう。

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