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「古市くん、社会学を学び直しなさい!!」社会学ってなんですか?

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「社会学」を語ることにはいつも困難がともなう。どうしてそれが、すぐに反論が予想されるような説明や、「社会学」に精通していない人にとっては難解すぎる議論になってしまうのだ。結果、社会学には「よくわからない学問」「信頼できない学問」というイメージがつきまとう。しかしそれはもったいないことだ。「社会学」がとても面白い学問だからだ。面白い上に役に立つ。そんな学問の魅力を一人でも多くの人にしてほしい。そんな思いから生まれたのがこの書籍。12人の社会学者に社会学とは何かを問い、対談形式でその面白さを発見していこう。

社会学者は評論家の代用として流通している

どの時代でもマスコミは便利屋を必要とします。法学者や経済学者は、法学や経済学のこと以外は論評しない。だから政治現象でも経済現象でもなく、社会現象としか呼びようのないものの論評が必要な時に、ある時期以降は社会学者にお呼びがかかったわけです。その結果、社会学という学問とは切り離されて、「評論=社会学」というイメージが定着して行ったのではないでしょうか。

確かにある時期を境に、社会学者という肩書きの人がテレビのコメンテーターとして呼ばれる場合、法学者や経済学者と違い、社会全般の批評ができるオールラウンダー的役割を求められる場面が多いような気がする。社会学者に評論家として声がかかるようになったのは、見田宗介さんや大澤真幸さん、宮台真司さんなどスター社会学者が登場したにも起因しそうだ。現在、社会学者としてメディアに引っ張りだこな古市憲寿氏もそういった人たちと同じ扱いを受けているのだろう。

外側に立った瞬間に〝イタい〟社会学者になる

佐藤 確かにある領域を狭く切り取って「私はこれの専門家です」と語りがちになりますよね。でも社会学である以上、領域を固定的に語ることはできないんです。社会学の基本には、物事を「関係」として捉える発想があります。だから、家族を取り上げた瞬間に、家族とそれ以外のものとの関係も考えていかなければならない。家族だけをポンと切り出して扱うことが本当はできないんですね。関係を考えていけば、より広い視野を取ることになりますから、「自分も内部にいる」ことも、よりはっきり見えてくる。それがパッとわかるかわからないかが、社会学のセンスというものかもしれません。

古市 センスというのは?

佐藤 つまり、自分は外にポンと立てていると思った瞬間に、〝イタい〟社会学者になるんです(笑)。超天才や神様に近い予言者でないかぎりそんな立場に立てる人間は、本来いないはずですから。

物事を関係で捉え「自分も内部にいる」ことを意識し、同じ平場で生きている人間として、ひとり一人に語りかける言葉で話して、考えてもらう。それしかできないのだ。社会学者はセラピストとコンサルタントだとコンサルタントに近いが、コンサルタントのように「こうすれば赤字は二年で解消できる」というふうに予言者になることはできません。社会学が確実に使えるという瞬間が一つだけあってそれは、自分で自分の首を絞めている人に「絞めなくていい」と言えることだという。首を絞めている人に対して、別の視点を提供したり、あるいはその人が抱えていることをより明確な言葉にすることで問題の本当のありかを考えやすくする手助けはできる。それが社会学の仕事だという。

保守本流と一般読者との間で

上野 はい、社会学に限らず、学会の保守本流と一般市民の間の「常識」には大きなずれがあります。

古市 でも、保守本流がやっている社会学と、一般向けの社会学って、そんなに断絶があるんですか。それとも以外とどこかでつながっているんですか。

上野 どちらの面もあります。たとえば、社会学界の保守本流が行っているSSM調査(「社会階層と社会移動」全国調査)の報告書を一般読者が読むと思う?

古市 読まないですね。だって、SSM調査は調査してから発表まで六年ぐらいかかっているじゃないですか。本も各巻五〇〇〇円以上します。

上野 確かに一般書にはならない。でも、歴史的な資料なんだから、六年かかろうが、それはそれで価値があるんです。学術書の部数が数百部のオーダーでも、何十万部の書物と比べて価値が劣るわけではありません。ただ読まれている学術書だってあるでしょう。小熊英二さんの分厚い本やピケティの本とかね。そういう書物が十万台のオーダーで売れるという日本は、アカデミシャンが書いた本を読む非アカデミシャンの層が厚い。フリンジ・アカデミック・ジャーナリズムと呼んでいますが。アメリカではその二つは全く断絶している。そういう読者層に注目すれば、日本では学界と一般読者層も全く断絶しているわけではありません。

アカデミシャンが書いた本というのは分厚い上に、高価(ピケティの『21世紀の資本』は5,940円)なのでよっぽど話題になってるとかでない限り手は伸びない。手に取ったところで難解な言い回しや専門用語の嵐で理解不能になる場合も。その点、ピケティの『21世紀の資本』は一般の人にもわかりやすいよう書かれていること(グラフや数式も最低限)でよく売れたのだろう。

12人の社会学者たちによる「社会学ってなんですか?」に対する回答。現在の社会学の立ち位置が確認できるようになっていて、これから社会学を学んでいこうという人には一助になるのではないかと思います。

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