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「人類の衝突」思想、宗教、精神文化から現代を見る

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対立する宗教と文明。日本は何を考え、どう立ち振る舞うべきなのか。思想、宗教、精神文化からみる人類社会の展望を宗教学者で東京大学名誉教授の島薗進氏と社会学者で東京工業大学名誉教授の橋爪大三郎氏2名の対談で読み解く。グローバル化の波に揉まれる日本が、宗教についてどのような歴史的背景を追っているのかにとくにスポットを当て自分の生きる社会の骨格を取り出してみるという狙いの書籍。

日本が負けている理由

90年代から後の失われた20年間で、みんな何を言っているかというと、日本生き残り戦略で、「日本が、日本が」という議論ですね。もうこの、「日本が」と言っている時点で、負けている。多重なアイデンティティのなかで共存を模索する世界から、どうしようもなく立ち遅れている。世界の人々のリアリティに直面できてないわけです。

EUが典型だが、ヨーロッパでもロシアでもアメリカでもインドでも中国でも中近東でもどこでも人々のアイデンティティは多重で、ローカルコミュニティ、エスニック・コミュニティ、宗教コミュニティ、それから国境を越えた連帯があり、「あなたは誰ですか?」と聞くと無数の答えが返ってくる。こういった多重性の方が世界標準だという。一方、日本は、いろんな経緯によりアイデンティティの輪郭が「日本」だけだと指摘。たしかにガラパゴス化して発展を遂げてきた日本は世界標準を恐れていた感がある。Amazonではなく楽天、スターバックスではなく自家焙煎と抽出法にこだわった純喫茶など和製にこだわる人もまだまだ多い。僕は選択肢が増えるのはいいことだと思うが…

少し話はそれるが、Pokemon Goがスタバをdisってくると話題になった。プレイ中スターバックスの店頭に立つと店の説明文に「意識高い〝系〟がApple製品を持ち寄り集ま…」という説明が。うちの近くの店舗ではいうほど多くないし、世界標準に対する恐れという程のものでもない。iPhone以外のデバイスはまだまだ多いとは言えないしMacBookの出荷数も減ってきている。なので、そんな人たちが安心してApple製品広げられる場所としてスタバがあるという認識。おっ!お仲間がいた!みたいな感じで。

日本人にとってイスラムとは何か

2015年1月にIS(イスラム国)に日本人が殺害されるという事件が起きた。このテロ行為によりイスラムとの対立構造が。

イスラムはよく理解できないし、距離感もつかめないし、態度が取れない。無理にケンカするつもりもないが、仲間であるとも思いにくいという、中途半端な感覚の日本人が大部分だろうと思います。

イスラム文化圏の人びとは、イスラム教と距離を置くのが下手くそ。コーランは神の言葉だとか、ムハンマドは最後で最大の預言者だとか、もし異教徒が攻めてきたらジハードの義務があるとか、日常生活で宗教法を守るなど当たり前のように信じる人がほとんどだ。「宗教は情報処理である」と橋爪氏、ムハンマドやコーランが重要だとかいうのは、情報処理のステップや優先順位についてある範囲の人々が共通のやり方を叩き込むことにより可能であったそれ以外の考慮すべき複雑なステップをはじめから取らないのだ。自分の情報処理へのエネルギーを節約するある意味レディメイドの結論を自分の結論にできる。情報の溢れる社会で単独で勉強するより効率的といったところだろうか。

なぜカルト宗教は暴力性を持つのか?

オウム真理教にしてもISにしてもある程度高学歴なメンバーも多い。学校という枠組みの中で好成績を出して承認され、修士号といったステータスを得るが実社会では承認されない疎外感からカルトやなんかにハマっていく。そこでは自分を承認してくれると勘違いするからだ。大抵の人は社会に出てしばらく働けばそういった感覚は解消されていくのだが。カルトは瞑想などの修行をメインとした孤立した精神世界であり、〝祈り〟などのコミュニケーションとは少し違う世界を形成している。そのため、人数は少なく孤立しているけれど外の世界が間違っていて自分たちが正しいと証明するために攻撃性が増すのだ。世界各地で宗教的右派のような勢力が政治的実効性をにらんだ方向へ向かっている。それは見方を変えると資本主義経済秩序の先行きが危うくなっているとも言える。

宗教はいいものが残って勝つのではなく、広がりやすいものが伸びる。人々の不安や怒りのようなものをうまく取り込んでいくやカルトのようなものへ不安や悩みを抱える若者たちが引き寄せられている。ぜひ思考停止でそういったものに身を委ねてしまわないよう、自分で考えて欲しいものだ。

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