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「トランプ政権で日本経済はこうなる」2017年1月20日の就任以降起こるのは悪夢か?追い風か?

2016年11月9日(日本時間)、世界の金融市場に激震が走った。「米国大統領選でトランプの当選が確実に!!」トランプ勝利を受け、日本経済への影響を探る緊急出版!大和総研の7人のエコノミスト(東京とNY)が分担執筆。トランプ政権の骨格も徐々に明らかになってきた。経済政策の要である財務長官に金融界出身のスティーブン・ムニューチン、国防・軍事政策を担う国防長官に「狂犬」の異名を持つジェームズ・マティス、経済・国際貿易政策などを担当する商務長官に著名投資家のウィルバー・ロスといった具合。2017年1月20日の就任以降起こるのは悪夢か?追い風か?

伝統的な共和党の主張から大きく逸脱

「イスラム教徒の米国入国を全面禁止にすべきだ」「国境に巨大な壁を築く。そしてメキシコに費用を負担させる」「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は米国の製造業にとって死の一撃になる」「日米安保は不公平だ。米軍撤退もいとわない」「北朝鮮が核兵器を持っているなら、日本も核兵器を持った方が良い」まさしく「暴言王」の面目躍如である。2016年11月、トランプはポピュリズム(大衆迎合主義)とも言える手法を駆使して、米国大統領戦で勝利を手中にした。

彼の主張は伝統的な共和党の主張から大きく逸脱している。米国の共和党は①減税と歳出削減による小さな政府路線、②社会的価値観や道徳の面で中絶・同性婚・銃規制に反対、③他国への軍事介入も辞さないタカ派的な積極外交主義、④自由貿易主義。こうした考えはオバマ政権に代表される民主党のリベラルな主張と対極をなすものであった。しかし、過去のトランプの言動などからすると伝統的な共和党の主張と大きく異なっている。

①財政面は、減税と同時にインフラ投資の拡大を主張しているため、結果的に財政赤字が大幅に拡大して大きな政府路線になってしまう可能性がある。②中絶・同性婚・銃規制への反対といった、道徳面での保守的な主張を前面に出しているわけではない。③外交面でも、「世界の警察官として、米国が他国に介入することは、費用対効果から見て割りに合わない」という、ビジネスマン的な発想から、米軍が他国に関与しない孤立主義に陥ることが懸念される。④貿易面でも、TPPに反対する姿勢を表明しており、米国が国内雇用確保の視点から保護貿易主義に走る可能性がある。

移民規制のもたらすもの

移民を制限すれば、まず、深刻な人手不足方インフレを招く可能性が生じよう。将来的には、米国の強みであるダイバーシティ(社会の多様性)を背景とする、イノベーション(技術革新)が大きく阻害されることにもなりかねない。

結果として、格差是正の処方箋を自由貿易の縮小に求めるトランプの見解は、明らかにバランスを欠いている。自由貿易を通じて米国経済を底上げする一方で、所得の再分配政策や教育改革などを通じて、格差是正に取り組むのが王道だろう。

短期的には円安・ドル高、中長期的には円高・ドル安リスクは残存

短期的には、為替市場におけるトランプ政権への期待感にも支えられて、為替相場は円安・ドル高気味に推移する可能性があるだろう。しかし、為替相場では、中長期的に見れば、円高・ドル安リスクが残存していると捉えておくべきだ。

これは、トランプのばらまき政策により財政赤字が急拡大すると、債券安(長期金利上昇)・株安・ドル安の進行が懸念される。そして、米国が孤立主義を強めた場合、地政学的リスクが高まり、消去法的に縁が買われやすくなる可能性も。

トランプの政策で浮かぶ業種、沈む業種

トランプが掲げる所得税減税は多くの家系にプラスの効果をもたらすが、最高税率を引き下げることで、特に富裕層が享受するメリットが大きい。また、相続税の廃止も、多くの資産を保有する富裕層に有利な政策である。このため、消費関連の中でも、とりわけ富裕層による個人消費の影響を受けやすい高額消費関連への恩恵が大きくなるだろう。

加えてトランプは処方輸入薬の規制緩和を掲げている。これが実現されると競争の激化による医薬品価格の下落が起こり医薬品業界のとっては逆風となる。

日本経済に与える影響

トランプ政権成立が、日本経済に与える影響を端的に示せば、「短期的には楽観」、「中長期的にはリスク山積で要注意」である。

米国向け輸出の変動と金融市場の変動が主な経路だが、さらに二つに細分化すれば次の三つの経路となる。①米国の通商政策変更によって起こる、米国向けと急かし向け輸出の変動という経路。②米国の政策変更を要因とした米国国内需要の変動によって起こる、米国向けと急かし向け輸出のの変動という経路。③トランプ・ショックでグローバルな金融市場が大きく動揺し、その影響が日本経済に波及するという金融面からの経路。

トランプは大統領選挙期間中も演説で、「日本が米国産の牛肉に38%の関税をかけるのであれば、米国は日本車に対しても38%の関税をかける」と主張した。これが現実となれば、「日本の輸出の大幅減少→国内生産の停滞→国内生産拠点の海外移転→国内生産能力の縮小→さらなる輸出の減少‥‥」という負のスパイラルが待っている可能性も。これに対し日本はライバル国である韓国とドイツのから学ばなければならない課題として「マーケティング力」と「ブランド力」がある。日本では伝統的に、ものづくりへの強いこだわりから、製造部門の発言力が大きく、マーケティング部門は軽視されがちだった。その結果品質の高さが評価される一方、消費者から見ると、ピント外れで価格の高いオーバースペックな製品となる傾向が見られた。そこから「技術で勝って、商売で負ける」と揶揄されるように。これからは品質の高さは維持しつつマーケティング力を磨かなくてはならない。

現在、アベノミクスは新・三本の矢(①希望を生み出す強い経済、②夢をつむぐ子育て支援、③安心につながる社会保障)を設定しているがこれに日米同盟と国際協調を基軸とする日本の繁栄のような国家観(ビジョン)に基づく第四の矢を放つことが求められる。

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